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4-1.(mis)understanding self-management
4-1-2 「なぜ(WHY)」から始める(Start with why)
1-2の動画などですでに述べたことですが、組織は“コンセプト”を目標に据えるべきではありません。“ティール組織が目標です”と言ってくる人がいたら、私は話を止めて尋ねます。
“ティール組織”という概念を目指すのですか?
本当に目指しているものは?
変革を求める理由は?
自主経営の場合も同じです。こう言って組織を驚かせるリーダーを見てきました。“よし、自主経営をしよう”こうしたリーダーは、細胞レベルで習慣的に概念先行で進めようとしています。まずは“なぜ”から考えるべきです。奥に潜む理由は?なぜ変革をする?
自主経営は目標実現の手段です。
概念が先行して組織に対し“自主経営にする”と伝えたら多くの反対や抵抗を招くでしょう。理由が分からないからです。メンバーを招待するというよりトップダウンの押し付けに感じるのです。しかも頭でっかちな議論になり概念的な話になって、自主経営は機能しないとか良い策なのだろうかと異論が出るのです。
だからぜひとも明確にしましょう。自主経営に移行したい理由は?その理由を伝えていきましょう。心の底にある動機を同僚たちに伝えて、変革の旅へと呼び込むのです。動機を明確に伝えるための案をいくつか紹介します。
自主経営は2つのことに関連付けられます。
1つ目は組織の存在目的です。そして2つ目は人や仕事についてあなたや周りが抱いている“前提”です。
自主経営は組織の存在目的と絡めて語ると効果的です。
たとえばヘルスケア分野の組織だったとします。病院だとしましょう。口で言うのは簡単です。
“私たちは情熱を持って患者に優れた医療を届け、健康や自律的な暮らしを提供したい”
それには知識を持つ看護師や医師への信頼が必要です。現在の病院は官僚制がいきすぎて、多すぎる階層や評価を生み優れた医療を阻んでいます。だから看護師や医師への信頼に基づくシステムに戻り、彼らの知識を信頼し最高の医療を届けたい。それが自主経営を目指す理由になります。
あるいはスタートアップ企業が立派な存在目的の実現を目指している場合、動機を伝えるのは簡単です。事業を立ち上げたばかりなのですべてが活気に満ちていて存在目的に大きな力を注げます。
しかし心配なのは成長後です。従来の固定的な階層制の組織になっていきます。すると動きは鈍り、活気は失われ、情熱を注げなくなり、存在目的の実現へ全力になるのではなく、3割の力しか注がないかもしれません。立派な存在目的があるのにです。だから、まだ自主経営の実践法が分からなくても存在目的に照らすとこれが進むべき道なのだと伝えることは大切です。
これらはほんの一例ですがとても効果があるのです。存在目的のために組織を改善すべきだと説明しましょう。
もう1つ絡めて語るべきは組織が持つ“前提”です。3-8の動画でも語りました。
そこでは従来の経営が持つ前提と、自主経営が根ざす前提を比較しています。従来の経営が持つ前提の多くはとても醜いものです。最前線にいる組織下層のメンバーを信じていません。賢明でもないし不誠実な存在だとみなしているのです。そのため複数の階層を設けて下層の判断をチェックしたり不正をせずに働くよう規則が設けられています。これは醜い形です。
自主経営の前提はもっと美しいものです。そうした前提を語ると醜い前提から新しい経営への移行も納得するでしょう。そこは信頼に基づく世界で、人は良い仕事を目指すものと信じられている。それにメンバーを縛る規則もありません。不適切な行動をするのはごく少数だと考えられています。だから自主経営への移行の動機を明確にしストーリーを語って力強い招待状としましょう。
自主経営という言葉を出すなとは言いません。良い概念ですし目指す方向を手短に説明できます。
しかし目標にしてはいけません。ストーリーを何度も繰り返し語ることで自主経営へと移行したい理由を伝えるのです。組織の存在目的につながる動機やその背景にある美しい前提を語りましょう。
あと2点、周りを招待するために、ストーリーを語るときは概念的でなく頭も心も腹の底もすべて使って語りましょう。これらの部分です。
それからもうひとつ。ストーリーにはできるだけ親しみを持たせましょう。聞き手に合った内容につくりこむのです。たとえばマネジャーたちに話しているなら、こんなストーリーを語れます。
“最初は自主経営を理解しにくいはずだ”
と伝えるのです。マネジャーの仕事には切ない部分があります。中間管理職の悲哀です。面白みや創造性に欠ける業務内容が多いのです。メンバーのやる気を維持し意思を統一する責務を負い上層部の目に良く映ることを目指す。そんな出世ゲームに参加していてパワーポイントやエクセルや会議に追われるばかりです。会議に人生を費やしたいですか?自主経営ならふたたび創造的な仕事ができ、組織の存在目的に奉仕することができます。
一方、現場の人々にも彼らに合ったストーリーを語ることができます。彼らには自主的に動いてもらう必要があり、全力を注いだり違いを生めると信じてもらい、良い案があれば決断し実行してほしい。
だからこれまでのように、せっかくの良いアイデアが階層に却下されていくシステムはもう嫌だと伝えるのです。
これが私からの提案です。“なぜ”から始めて自分を掘り下げるのです。
最適な招待の形は?
組織を自主経営へと誘う本当の理由は何でしょう?
4-1.(mis)understanding self-management
4-1.自主経営についての誤解
- 4-1-1 あなたにとって自主経営とは?(What does self-management mean for you?)
- 4-1-2 「なぜ(WHY)」から始める(Start with why)
- 4-1-3 組織の発達段階と自主経営(How to talk about self-management from all stages)
- 4-1-4 たくさんの誤解(So many misconceptions!)
- 4-1-5 誤解1:自主経営はリスクだ(Misconception 1: It’s risky)
- 4-1-6 誤解2:構造もプロセスもルールも不要(Misconception 2: No more structures, processes, rules)
- 4-1-7 誤解3:トップは意思決定をしない(Misconception 3: No more decisions “from the top”)
- 4-1-8 誤解4:全員が平等(Misconception 4: Everyone is equal)
- 4-1-9 誤解5:権限委譲とサーバント・リーダーシップ(Misconception 5: Empowerment and Servant Leadership)
- 4-1-10 誤解6:コントロールは悪だ(Misconception 6: Control is bad)
- 4-1-11 自己修正システムを理解する(Understanding self-correcting systems)
- 4-1-12 自己修正システムの事例(Self-correcting systems: examples!)
- 4-1-13 自己修正:出欠を通した意思表示(Self-correction: voting with your feet)
- 4-1-14 自己修正:リーダーの役割(Self-correction: the role of leaders)
- 4-1-15 コントロールを手放す喜びと痛み(Top leaders: the joys and pain of giving up control)
- 4-1-16 自主経営の5つの主要プロセス(Five key processes of self-management)
- 4-1-17 システム以外に重要なもの(Focus on mindsets, culture or systems?)
- 4-1-18 支配者文化:システム変革を超えて(Dominator culture: changing systems is not enough)
- 4-1-19 構造はどのように変化するか(How structures typically change)
- 4-1-20 シナジーと規模の経済(Synergies and economies of scale)
- 4-1-21 トップのチームは必要?(Do you need a team “at the top”?)
- 4-1-22 変革の2種類の痛み(Two types of pain along the journey)
- 4-1-23 既存のシステムを導入する?(Adopting a ready-made system?)
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