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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-6 誤解2:構造もプロセスもルールも不要(Misconception 2: No more structures, processes, rules)

これはいつも必ず生じる誤解です。だからぜひしっかりと聞いてください。
誤解というより危険な落とし穴で、とても多くの組織がはまっています。そこから抜け出すには多大な労力が必要になります。その誤解とは、

“自主経営には、構造もプロセスもルールも不要だ。
昔のシステムには耐えられない。構造やプロセスや規則やルールばかりで、とても息苦しいから新しいシステムではすべて撤廃するべきだ。全部取り除いてくれ”

意識的であれ、無意識であれ、こうした考えがほとんど全員に浮かびます。それが自主経営を説明したり、導入した際の特徴です。
もちろんこれは大いなる誤解です。そうした誤解に陥ると、昔のシステムのすべてを取り除き背骨を抜いたあと、新しい支えをつくらず、結局確かな輪郭のない混沌が生まれてしまうのです。
すると組織は混乱し、何をすべきか分からず、動きは遅くなり業績も落ちて不満が蓄積します。そこで誰かが何か対策を講じようと考えますが、意思決定の基準や方法が明確には存在しないため、権力争いが発生し昔の独裁体制に戻ったりします。それは悲しく醜いことです。

だから誤解を晴らしておきましょう。自主経営には構造もプロセスも規則も存在します。従来と同じですが、形が大きく違い、数も少ないことが多いです。でも構造は確実に必要です。

どの生命体にも、構造や境界やプロセスがあります。
たとえばビュートゾルフです。1万4,000人を擁する在宅ケア組織です。彼らは輪郭のない混沌とした組織ではありません。確かな構造を持ち、10〜12人でチームを構成し、役割分担や意思決定の方法が明確に存在し、会議や実績管理の形も決まっています。自主経営的な工場の場合はチームを動かす構造があり、品質管理や紛争解決の方法が確立されています。中心を欠いた無定形のものではありません。

このように構造は存在します。しかし従来の階層的な組織とはずいぶん形が違います。
たとえばこれまで権力は少数のものでしたが、すべての人が力を持てる構造に変わります。これは大きな変化です。他にもこれまで組織は固定的なものであり、大きな再編があるまで変わらないものでした。
しかし新しい構造は、流動的かつ有機的なもので絶えず形を変えていきます。環境やニーズの変化を感じ取りながらです。形こそ違いますが構造は存在します。

プロセスの場合も同じです。
実に多くの組織で見られるのが、プロセスを形式化して押し付けることです。つくった当時には機能していたプロセスも、人や状況が違えばもはや機能しません。創造性が奪われ作業内容も無益でプロセスから逃れたくなります。つまりプロセス自体を排除したくなります。
しかしプロセスも“形態は機能に従う”ものです。プロセスの設定が必要かどうかは、仕事や業界の性質次第です。

ビュートゾルフでは、必須のプロセスというのはほとんど存在しません。看護師は全員プロであり、看護師の知識や、直感や患者との関係に基づく業界なので、彼らを信頼しているからです。
モーニング・スター社の場合は、カリフォルニアにあるトマトの加工および運送業者で彼らには1つの大きなプロセスがあります。トマトからケチャップをつくるプロセスです。これは入念に管理すべきプロセスで、段階に応じてトマトの温度やおそらく圧力や粘度が指定され、忠実に従う必要があります。だからモーニング・スターにプロセスが多いのは業務形態による必然です。
ただし昔とは違い押し付けられたプロセスではなく、メンバーが自分たちで決めたり、協力や交渉をして適切なプロセスを定めています。

最後にルールの場合も同じです。
自主経営においても“ゲームのルール”は明確です。意思決定や助言プロセスの方法、決定の承諾を得る方法、紛争解決の方法、フィードバックの方法などいまでもルールは明確に存在しています。
ここでも昔との違いは押し付けられていない点です。たとえ押し付けられていても、いつでも変えられます。もはや役に立っていないルールには、誰でも変更の提案ができます。意思決定方法はどんなものでも構いません。

これで明確になったことを願います。
自主経営には構造もプロセスもルールもあり、従来のものと形は違いますが決して混沌とした無秩序ではありません。

そしてこうした誤解が定着した多くの組織では困った事態が生じてしまいます。よく聞くのは“好き勝手にできる”と誤解するケースです。“自主経営”を切り札のように使って言うのです。
“自主経営なんだから自分の好きにする”
もちろんそれは間違った人との関わり方です。そうした誤解には私ならこう答えます。

“確かに昔のような上下関係はないので指図はできません。
しかしルールは教えられます。合意を得たルールなので従うべきです。内容が気に入らなければ変更を提案してください。でもルールがある限り従うべきです。ルールを無視して自分の好き勝手にはできません”

以上です。復習しましょう。自主経営には構造もプロセスもルールもあります。ただし形が違い、より効果的かつ人間的で流動性もあり、より有機的で常に変化します。
たいてい協力して取り決めるので当事者意識も芽生えます。混沌とした放任ではありません。ぜひ落とし穴に注意しましょう。古いシステムを壊す場合は同時に新しい支えを導入すべきです。

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