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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-12 自己修正システムの事例(Self-correcting systems: examples!)

前回は自己修正の重要性を語りました。自己修正は自主経営の核です。自己修正できれば、マネジャーや上司が問題解決に介入する必要がなくなります。
自己修正はとても重要な原則です。現実の場面でどう機能するか知っておくと便利なので、実践例を考えてみましょう。

6つのケースを用意しました。問題が起こりそうな事態や、何らかの対応が必要な状況の例で、従来の組織であれば上司が介入して問題解決にあたったり官僚制や階層制を導入する状況です。
そうした状況に自主経営はどう対処するでしょう?
どのような構造や慣行ならシステムが自己修正できるでしょう?

そしてよろしければ、この動画はエクササイズとしても活用していただけます。
“この状況自分ならどうするだろう?”
“自己修正システムをつくるため自分は何をするだろう?”

前回の動画の内容も忘れてはいけません。
チームは自らの仕事の結果に直接触れる必要があります。すぐにフィードバックを得て仕事に誇りや痛みを感じるべきです。そのために必要なのは、何が“良い仕事”か統一基準を持つことです。その基準と定性データや定量データを照らして、健全な状態かどうか、確認し意見を交わし合う場も必要です。

では始めましょう。私が考えた6つの場面を紹介します。

1つ目はチームを想像してください。そのチームは成績が落ち始めています。原因はメンバー間の不仲かもしれませんし、モチベーションの低下による遅刻かもしれません。あるいはスキル不足であれとにかく成績が低下中です。
どうすれば自己修正をして、上司の介入を避けられるでしょう?

2つ目は複数のチームがあり、あるチームに仕事が偏り他が持て余している状況です。悠々とした人がいる一方で、必死に汗をかく人がいます。
どうすれば自己修正できる?

3つ目は顧客を想像してみましょう。こちらの仕事の質や納期に不満を抱いている状況です。

4つ目は革新的なプロジェクトを計画しているとします。多くの時間をかけて調査や研究を行ってきました。すると次第に、計画が成功すると思えなくなっていくのです。
この状況をどう変える?

5つ目はシンプルで、毎週開かれる会議が時間のムダに感じる場合です。どうするべきでしょう?

最後の6つ目は、サポート機能に従事している人たちが、たとえば人事や品質管理や監査などの人たちがあまり価値を生んでいないと思われる場合です。
どうすれば自己修正できる?

エクササイズとしてご覧になっている方は動画を止め、6つの例について考えてみましょう。
どうすれば組織のシステムを上司が介入することなく自己修正させられるでしょう?
これから私の考えを語りますがそれはひとつの案であり他にもたくさん手段はあります。唯一の解決策ではありません。たくさんの手段があると知るのは良いことです。

シンプルな手段のひとつは、データの活用です。客観的な指標を用います。これはチームの成績が低下している際に有効でしょう。

ビュートゾルフは美しい実例です。同組織は無数の看護師チームを形成しています。重視している財務指標のひとつが、彼らの言う“生産性”です。これは看護師の労働時間であるおよそ週40時間のうち、顧客に支払請求できる業務時間数を算出したものです。考え方はシンプルで、基準を60パーセントとし、週40時間のうち24時間が健全な範囲とされています。それで組織全体が上手く機能し、それ以外の時間は出張や社内会議、研修などが行われています。
チームが機能しない状況はよく発生します。何か勢いが失われたり、私生活に何かが起きて仕事に打ち込めない看護師がいたり、地域の医師との連携がうまく取れなかったり。

生産性が落ちたとします。ビュートゾルフの対処法はシンプルです。毎月生産性の数値を出して、全チームをランク順に並べるのです。
上位の生産性は70〜80パーセントかもしれません。顧客への請求時間の割合です。そこから下がって60パーセントのチーム、その基準値以下のチームと続いていきます。50や40パーセントに下がると…それはまずいことです。
ビュートゾルフはこうした公平で透明な指標さえあれば、チームに抗体のような存在が生まれると気づきました。10〜12人の看護師チームなら、生産性40パーセントと知ると誰かひとりは“会議を開いて話し合おう”と声を上げ、“誇れる結果じゃない”と言うはずです。健全とされる統一基準を60パーセントと決め、毎月生産性のデータを算出する。そしてそれを基に会話をする。

さらにビュートゾルフにはサポート役のコーチがいます。上司でないので強制力はありませんが、コーチも生産性のリストを見て担当チームの数値が40パーセントなら、電話をかけて問題や手伝えることはないか尋ねてくれる。それも役に立ちます。メンバーはデータを見て自己修正に移るのであって、こうしたコーチの役割は電話をかけるだけです。

2つ目の例に行きましょう。あるチームに仕事が偏り他が持て余している状況です。
どう対処しましょう?従来の組織の場合かなり柔軟性に欠けるはずです。仕事が多すぎるチームが上司に不満を伝えて、その上司がさらに自分の上司に増員の相談をする。そこまでで2〜3ヶ月かかり増員には承認が必要で、そこに人事部が入ってきて他チームからの補充を提案する。とても面倒で長い会話になります。

自主経営組織だとどのように対処されるでしょう?FAVIの例を挙げます。FAVIは“ミニ工場”に分かれています。アウディやフォルクスワーゲンなど顧客ごとにミニ工場チームがあります。FAVIでは毎朝、各工場チームから1人が集まってミーティングをおこなうことで状況を報告し合います。
“いま大変なので今日と明日2人増員したい”
すると周りが言います。
“うちから誰か送るよ”
そしてチームに戻り
“2人必要らしいけど誰か行かない?”
と言うと志願者が行っておしまいです。5分のミーティングで済むのです。システムとして確立しています。

頻度は場合によって異なり、私の知る病院では看護師チームでのミーティングは3〜6ヶ月に一度です。内容は同じで、仕事の偏りを見てチーム間で調整します。このように仕事の偏りはミーティングで解決できます。会話をするだけです。それだけで済みます。

3つ目の例に移りましょう。顧客がこちらの仕事の質や速さに不満を持っている場合です。製品やサービスに対する不満です。
従来型の組織の多くでは、やがて営業や財務のマネジャーに報告がいき、その人たちがまた自分の上司に相談し、相談を受けた上司が問題に取り組み…時間がかかるうえ自己修正できないシステムです。

こういう場合は構造の変革が必要になります。自己修正システムにする方法のひとつは、関わるメンバーの全員がその仕事の結果に対して、直接的なフィードバックを得ることです。
FAVIを例にして説明しましょう。会社の変遷をお伝えします。フランス北部にあるFAVIは、600人ほどの小さな金属メーカーです。主に自動車メーカーへ部品を提供し、銅を使った製品などをつくっており、主力製品は車の変速用のギアボックス・フォークです。FAVIも1983年までは従来型の経営でした。機能別の組織構造だったのです。
クライアントからの発注が営業担当に届きます。その担当者が、会社のシステムや営業事務に受注を報告する。受注の情報が登録されたら、たとえばその製品を製造する2週間前にマスタープランの部門で計画が練られます。この製品を工場でいかに製造するか、計画するのです。そして実際に製造する前日になると、別チームが詳細な計画を立て、必要な機材などを揃えその情報を見た人事部が必要な人員を割り当てる。
“あなたは2時間で〇個、あなたは3時間で〇個担当です”
そうして仕上げられた製品が発送されクライアントに届く。

この長い行程の問題は、ブラックボックスが生じることです。納品の遅れにクレームが入っても、営業担当は原因を説明できないのです。彼は受注を報告しただけであとは複数の部門に流れていき…一方で作業員は2,000個つくれと指示を受けるだけです。どこのクライアントなのかも分からないし、納期や遅延の状況も分かりません。
この場合、関係者全員が仕事に伴う痛みや誇りを直接感じる機会がなく、ブラックボックスに入っていました。顧客からのクレームを受けたり、納期遅れの割合を見ていた人は痛みを感じるでしょうが、関係者の多くは痛みを感じません。

そこでFAVIは組織構造を根本から変えました。前に紹介した“ミニ工場”に分けて運営したのです。フォルクスワーゲンの工場や、プジョーの工場などに分け、関係者全員がその工場で働き製造だけでなく営業担当もそのチームに入るのです。業界の受注サイクルに合わせ、ミニ工場で営業担当がチームと会議をします。そこで営業担当は次のように言うのです。
“〇個の注文を受けました”
すると周りは“いい数だね”とか“なぜそんなに少ないの?”と反応します。そうして受注の結果に喜んだり悲しんだりしてから、その場で納期を決めることによって全員が納期を認識します。そうすることで全員が納期を守ろうとするのです。

もう30年以上、FAVIは納期遅れが1件もありません。納期厳守に誇りを持ち、それを体現してきたのです。“遅れないこと”が行動規範であり、日々データを見ながら遅れの危険があれば話し合うのです。本でも紹介しましたが、素晴らしい例があります。
あるチームは問題が生じて、納期から数時間遅れそうでした。そこでチームはヘリコプターをチャーターし、時間通りに届けたのです。遅れないことが誇りだからです。実際は遅れても問題なかったそうですが、相手よりも誇りの問題でした。
このように多くの自主経営組織では、複数の機能を備えた小さなチームに再構成され、クライアントごとに関係者全員でチームとなり、誰もが仕事の結果を直接実感できるのです。

次は4つ目の例です。新しいプロジェクトがあるとします。製品やサービス刷新の検討を重ねるほどに自信が失われる。そんなとき従来の組織では、対応までに長い時間がかかります。たいていのチームでは、たとえば3ヶ月ごとに運営委員会による大きな会議に参加し、進捗を青や黄色や赤の指標で示します。
しかしそこではなるべく“青(順調)”だと報告したい気持ちが働きます。チーム全員が手応えを感じていなくても、上司の前で順調なふりをしてしまい、半年や1年後になって順調でないことが発覚し、リーダーが介入して中止したり別の方向へ舵を切るのです。必要なのは半年や1年後でなくすぐに修正できるシステムです。
どうすればいいでしょう?

それを実現するシンプルな方法のひとつは、嫌なプロジェクトからは離れられるという“共通ルール”を持つことです。
これはバルブ社で活用されている慣行です。バルブ社は大手のゲーム会社です。ゲーム制作は大掛かりで、予算もハリウッド映画と同等で一大プロジェクトです。その会社の慣行は驚くべきものです。
“今のプロジェクトが嫌になったら椅子を移動して別チームで作業する”
彼らは、それがシグナルの察知に最適だと気づいたのです。人が減っていくため、有望な企画でないと分かるのです。人が離れていくのは手っ取り早い自己修正です。

“嫌なら離れよ”という明確なルールがあるのです。すると反応は次のどちらかです。
1つは人が離れるのを見て、誰もプロジェクトを救おうとしない。それも構いません。消える運命だったのです。
一方で“重要だから救うべきだ”と言う人がいれば、そこから“どうすれば救える?”と会話が始まり、会議をして変更を加えたら“それなら戻ってこよう”と人が増えていく。

同じく本で紹介したサン・ハイドローリックスも、エンジニアは自分の好きなプロジェクトに参加します。優先事項や青・黄色・赤といった進捗に関する指標もなく、嫌なら離れるのです。誰かが声を上げ修正したら、戻るか検討します。

5つ目です。ミーティングが多く時間のムダと感じる場合も同じです。

先ほどと同じルールで臨みましょう。ムダだと思ったら席を立つのです。文字通り席を立ち、謝罪もせず無言で退席します。ぜひ共通ルールにしましょう。すぐに自己修正するための最適なシグナルです。すると会議自体がなくなるか、あるいは会議は重要なのにうまくいってないだけの場合は、誰かが言うでしょう。
“確かにうまくいってないけど重要だからこう修正しよう”
そうして人が戻ってきます。

最後6つ目の例は、サポート機能に従事するメンバーがあまり価値を生んでいない場合です。

ここでもルールを共有しましょう。“役割は効果がある場合のみ生じる”
効果がなければ役割は自動的に消滅します。FAVIがその一例です。覚えている人もいるかもしれません。若い機械作業員の話です。彼は好奇心に満ちた男でこう言いました。
“世界を旅して新しいテクノロジーとサプライヤーを発掘したい。インドや中国に行って活用可能な新しい技術を探したい”
その提案への答えはこうでした。
“やってみて効果があれば続けよう。効果がなければ役割が消える”
そうして彼は任務に就き、月に1度戻ってきて金曜午前に自由参加型の会議を開いて、発見したテクノロジーやサプライヤーを報告しました。つまり会議の参加者がいれば、それは価値があるという意味であり、役割は存続します。参加者がいなければ、役割は消滅し彼は機械作業員に戻ります。

この原則は、どのサポート機能にも適用できます。サポート機能は基本的に誰もがいつでも利用できますが、そのサービスを求める人が誰もいない場合はその役割は消えるので、新しいタスクを探しましょう。それがシステムの自己修正です。金曜に誰も来なければ彼の役割は消滅します。

これらの例が役に立つことを願います。どれも唯一の回答ではなく、アイデアを刺激するものです。あらゆるものがシステムの自己修正に役立つことが分かります。

自己修正にはデータやレポートが活用できます。
さまざまなチームの人が集まるミーティングも有効です。
組織構造の変更や、共通ルールも役立ちます。“嫌なら離脱できる”とか、“役割は暫定的なもの”というものです。

他にもあるでしょうが、大切なポイントは、どのようなシステムをつくればすぐにシグナルを察知してそれに対処できるかです。

ぜひこの動画を参考に自分の組織を振り返ってみてください。自己修正できずまだ介入が必要なシステムはないでしょうか?どうすれば自己修正できるでしょう?

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