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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-15 コントロールを手放す喜びと痛み(Top leaders: the joys and pain of giving up control)

前回の動画ではリーダーの役割の変化について語りました。階層型から自主経営になると役割は大きく変化します。
階層型のマネジメントでは、社員や組織のコントロールはリーダーの義務です。必要な結果を出すためにコントロールするのが義務なのです。トップの権力は大きく、社員の行動に対し指示や制限が可能で、問題が発生したら介入し解決に取りかかります。前回はそれがどう変化するかをお話ししました。

自主経営においてリーダーの役割は、もはや“問題解決”ではなく、組織が自己修正できるようなシステムの構築を手伝うことです。
つまりリーダーによるコントロールではなく、組織がコントロールするのです。
つまり、リーダーがコントロールの種を組織に埋め込むことで、組織が自分で強くなっていきます。

今回お話ししたいのはこの変化をリーダーがどう感じるかです。実際の経験者たちに話を聞くと、この変化は大きな喜びと痛みを伴うものだと言います。
さいわい痛みは初めの頃の一時的なもので、残念ながら喜びはしばらく後でやってきます。痛みで始まり喜びは後からです。痛みは2つの方面からやってくるようです。

1つ目は言うなれば“エゴの痛み”です。
コントロールという行為には中毒性があります。組織のメンバーや状況をコントロールすることに病みつきになってしまうのです。リーダーが英雄のように登場し、問題を解決して1日を終える。
“自分がいて良かった。でないと大変なことになっていた”
そこには興奮や万能感があります。

私にもそんな経験があります。問題に介入して解決するのは大きな快感なのです。その特別感を手放すのは難しく、自分も英雄のつもりですし組織も英雄的リーダーに価値を感じています。そのためエゴをしっかり見つめましょう。自分を責めず痛みと向き合うのです。これまでは英雄的な行動を称えられてきたはずですし、そんな人間であることを誇りに思っていたはずです。

もうその役割は手放しましょう。組織の誰もが英雄になれるようにするのです。
リーダーの特別性は減ります。しかしリーダーは取り組みを主導したり、問題解決の手伝いはできます。介入ではなく自己修正システムを構築して支えるのです。

2つ目の痛みはいわゆる“幻痛”です。
リーダーは多くのレバーを動かして迅速に決断してきました。
“あれをやれ。それもいい。そっちはダメだ”

それらのレバーはもうありません。新しいレバーに慣れる必要があります。たとえば助言プロセスなどです。すると最初は幻痛が起きます。
“昔はこうできたけど新しいやり方に慣れなければ”
新しいレバーも同じくらい強力だと気づくには時間がかかります。最初はそう思えず、助言プロセスを経ての決断を面倒に感じますが、しばらく経つと新しいレバーが前と同等以上に効果的だと気づきます。

それでいいのです。そうした痛みも経験のうちです。多くのリーダーが経験するので自分を責めないでください。その後喜びがやってきます。とてつもない重圧から解放される喜びです。
組織が自らをコントロールして、あるべき姿で動いているとリーダーは正しい舵取りという重圧から解放されます。誰もが質の高い仕事を続け、ミスをしてないか以前のリーダーはすべてを機能させる重責を負っていました。

私はリーダーたちから喜ばしい話を何度も聞きました。
“2ヶ月も顔を出してないのに電話もかかってこない。しかも会社に戻ったら何も問題なく動いていた”
こうした大きな安心感を数ヶ月や1〜2年後に感じるようになるでしょう。それらがリーダーの感じる痛みと喜びです。

リーダーと会話するうち興味深い現象に気づきました。コントロール欲を完全には手放せず自分を責めていたのです。フランス語で“手放す”は“Lelâcher-prise”と言いますが、リーダーは手放せない自分を責めて“いまもコントロールを好んでしまう”と言うのです。それらはとても興味深い会話でした。
なぜならたいていの場合、コントロール欲は英雄的なエゴへの固執が原因ではなかったのです。

多くの場合そうしたくなるのは、その直感が合っていてコントロールが必要だからです。つまりまだ自己修正するシステムを構築できておらず、コントロールを手放すのが危険な状況にあるのです。

ある組織では、縦割り化した階層構造に変革が必要でしたが、リーダーは小さな多機能チームの設置を渋っていました。彼と話してみて分かりましたが、彼は正しかったのです。縦割りを廃止できないのはエゴのせいだと言うのですが、話すうちに気づいたんです。
彼の状況の場合は、メンバーの成熟度が足りておらず、コントロールを手放さないという選択が正しかったのです。私は普段メンバーの成熟度が足りないと言われたらそんなの嘘だと答えますが、彼の場合は本当でした。
そこのメンバーにとって自主経営はあまりに唐突で別次元のものだったのです。
なので解決策は明確でした。自主経営組織に切り替えるのは各チームに少なくとも1人新しい複雑なタスクを担える人ができてからにするのです。やがて準備が整うでしょう。

興味深い事例でした。自分のコントロール欲を責めないでください。それはエゴではなく合図かもしれません。まだシステムが自らをコントロールできず問題を自己修正できないと察知しているのです。

そのためリスト化は良いエクササイズになります。
コントロールを手放すにあたり自分は何を懸念している?
何が原因でためらっている?

リストにしたら自分や信頼する人や組織の人間と振り返りましょう。
“この懸念はおそらく単純にエゴのせいだから成長して乗り越える”
“これはきっと幻痛であり学習の過程だ”
あるいはその懸念は、コントロールがないと実際に危険だからかもしれません。まだシステムに自己修正する方法を組み込めておらずコントロールが必要な状態なのです。

このようにリストを振り返ればやがて準備が整うでしょう。
うまくいけば数ヶ月後にはコントロールを手放して肩の荷が下り、喜びを感じられるでしょうし、素晴らしい長期休暇も取れるでしょう。
誰もが質の高い仕事を続けるよう気を配ったり、コントロールしたりするのは嬉しいことにシステムがやってくれるのです。

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