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3-8 新旧の組織の前提を明確化する(Make old and new assumptions explicit)

先進的な組織の多くは価値観を明確にする努力をしています。『ティール組織』執筆時の調査で強く印象に残っているのは、FAVIやRHDやAESがより深い取り組みをしていたことです。自分たちが持つ無意識の前提を振り返り、人や世界や職場に対する考え方を知るのです。これには有名な理論があります。職場での無意識の前提を理論化したものです。マクレガーが1960年代に提唱したX理論とY理論です。

初めて聞くかもしれませんが概要はこうです。マネジメントにおいて当時は一般的で残念ながら今も広く残る考え方をX理論と呼びます。従業員は信頼できず怠け者で仕事嫌いだという前提で、従業員をコントロールするためにシステムや上司や規則を導入してサボらず仕事をさせるという考えです。一方で正反対の前提もあります。それがY理論です。従業員は意欲的であり、環境が整えば仕事を愛すし信頼できるもの。その前提だとマネジメントの形も正反対になります。私が研究してきた組織はそうしたマネジメントを見事に体現しています。

私が感銘を受けたのはFAVIやAESやRHDは前提を明確にするだけでなく、言葉で伝え続けていた点です。特にAESでは、従来型運営の組織を買収した際に必ずやっていたのが、創業者のデニス・バーキ自らが従業員に対して、従来型のマネジメントにおける無意識の前提を説明したうえで、その問題点を指摘し新しい前提を語ることです。驚くまでもなく組織によっては、“同行者”としてコーチを雇っています。トスカーナというフランスの企業は組織にコーチを派遣し前提の明確化を行います。最初の支持者たちとの会合などでも、前提を明確化するべく従業員に呼びかけるのです。

小さなグループに分けて問いかけます。“自社の今のマネジメントではどんな無意識の前提があるでしょう?”すると悲惨な前提が判明します。従業員は泥棒で信用できないとか、この組織で重要な決定権を持つのは男のエンジニアだとか、20年以上勤めた人が権限を持つといった前提です。この取り組みは解放感を生むようです。少人数のグループで無意識の前提を掘り下げ、発見したことをマイクで全体に向けて発表する。悲惨な前提を指摘できる解放感です。前提の存在を認めて言語化し、もう嫌だと主張できるのです。無意識の奥底を明らかにするのは難しいことです。

方法のひとつとしては、自社の経営慣行を総ざらいして、その慣行から見えてくる前提を考えるのです。あちこち鍵がついていたら社員を信用していない証拠だし、多くの階層を持つ組織だった場合、最下層の社員は愚かだという前提がある。目標やインセンティブが設定されているのは、それがないと怠けるという前提があるからです。あらゆる慣行を振り返って、無意識の前提を洗い出してみましょう。

その次のステップとしてトスカーナやAESはこう問いかけます。“決別したい前提は特定できましたが” “取り入れたい前提は?” もちろん素晴らしい前提にしたいはずです。たとえばFAVIでは、社員は基本的に善人だという前提に立ち、現場から生まれた価値観を大切にしています。RHDが立脚しているのは、“人の価値は等しい”という前提で組織運営に大きく影響しています。全員でリストを作って理想の前提を考えてみましょう。さらに熱心な組織では、新しい前提に署名し重みを与えています。

またニールス・フレギングは手紙の執筆を提案しています。組織に宛てた手紙の中で前提について語り、宣言や声明を記すのです。要点はこうです。変革の旅の序盤は手探りで進むしかありません。しかし新しい前提を持てばそれが基準となり、常に確認ができます。“前提に沿った変革になっているか?” “新しい前提でなく古い前提に陥っていないか?” 前提を意識するのは効果的で変革を後押しします。

AESにならって新しいグループを引き込んだり、他の組織を取り込むたびにこれが私たちの前提ですとただ伝えるのではなく、まずは現状を分析してもらいましょう。無意識の前提を明らかにするのです。それから新しい前提を書いてもらう。宣言や手紙を見比べるのはとても効果があります。なのでオススメします。ぜひ検討してみてください。このエクササイズを通して、従来の前提を壊し新しい前提を築いては?

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