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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-13 自己修正:出欠を通した意思表示(Self-correction: voting with your feet)

自己修正を生む効果的な方法は、嫌なものには参加しないことです。欠席して反意を示すのです。自己修正の例を紹介した前回の動画でも触れましたが、もう少し詳しく語ります。とても重要な概念なのにほぼ直感に反しているからです。

従来の組織においては割り当てられた仕事やプロジェクト・チーム、そして参加を求められた会議は放棄できません。そんなことをしていたらクビになるでしょう。
なぜなら従来の組織は、構造として組織の上層部にいる誰かが経験や知識を活用して、どのプロジェクトや役割や会議が重要かを決め、それを実行するのが社員の役割だからです。社員が放棄すると構造が崩れてしまいます。

自主経営では、役割やプロジェクトや会議の参加を押し付けません。嫌だと思ったら立ち去ればいいのです。ただし勘違いしないでください。
“つまらないからもう止めよう”
そんな事態は起きません。自主経営組織の多くでは仕事や組織に対し社員に当事者意識があるため、つまらない仕事でも役に立つならば当然のように取り組みます。

今回話題にしているのは次のような場面です。
“これに時間を費やしても何も生まないと思う”
“自分が別のことをした方が組織の目的に沿うはずだ”
その場合は参加をやめましょう。その場合は我慢せず積極的に立ち去るのです。

信じがたいでしょうが根拠があります。その場から立ち去るという事実はとても貴重で微弱なシグナルとなるのです。これはとても重要な概念です。
“弱いシグナル”と“うるさいシグナル”。ほとんど語られないテーマですし私も本で詳しく触れていませんが次のような概念です。
“多くの問題は最初から弱いシグナルを送っている”
“問題が大きくなるにつれシグナルもうるさくなる”

これは私生活を考えると分かると思います。
たとえば気持ちが燃え尽きたり、病気や散々な離婚などはどれも耳にうるさい大きなシグナルです。しかし、それまでにはたくさんの小さなシグナルを見逃してきたのです。

なので自主経営における自己修正の目標は、弱いうちにシグナルを感知し害のない段階で修正することです。弱いシグナルを感知したら修正をおこなうのです。一方大きな組織の多くでは、弱いシグナルを感知しても上層部が取り合わず、問題が大きくなってどんどん膨れ上がり、とても大変な修正が待っています。

たとえば社員が持つ本音、“これはダメだ”、“時間のムダだから別のことに取り組もう”そういう弱いシグナルの感知が大切です。こんなちょっとした反応です。
“ここは良くない。別の場所の方が有意義だ”
そのシグナルを捉えましょう。そんな本音を感じたら立ち去るよう促すのです。すると次の道は2つに1つです。

1つは“何も起こらない”。
参加をやめても誰も気にしません。それはその取り組みが無用なものであるという何よりの証しです。立ち去る人間に気づかない場所に時間を使うのはムダなので離れられるのは良いことです。

もう1つは誰かが気づいて注意する場合です。
“待って簡単にはやめられない”
“重要な顧客のためだから放棄なんてできない”
そこで初めて自己修正に向けた会話が生まれます。簡単に放棄できないなら、どうすればこの仕事を再び面白く意義あるものにし有益な時間だと感じられるか考えるのです。自己修正のきっかけは実に様々です。

退席による意思表示以外の例も紹介します。前回の動画では、プロジェクトにおける実践例を語りました。関心のある方は『ティール組織』の“プロジェクト”の節を読んでください。

サン・ハイドローリックスの例を取り上げています。
油圧部品をつくる会社で、大きな開発部門があります。その部門では数百の企画が同時に走っているのに、全体の進行を司る中心的な機構は存在せず、全体の優先順位を取り決めたり常にプロジェクトの進行状況を把握する部門がありません。彼らはそれを排除して、社員は価値を感じるものには取り組むと信頼しているのです。
そのため誰かが参加を拒んだ場合、反応は2つに1つです。重要でないので何も起きないか、誰かが“このプロジェクトは放棄できない”と言って自己修正や改善が始まります。

書籍ではバルブ社にも触れました。世界最大手のゲーム開発会社です。そこでは全員がキャスター付きのデスクやイスを使い、自由に参加や離脱をします。それが弱いシグナルの感知に最適なのです。

動画では会議にも言及しました。ロラン・ルドゥ氏はベルギーの運輸省での会議ルールを教えてくれました。
“会議に自分は不要だと感じたら退席できる”
ムダと思ったら退席するというルールも参考にしてください。

FAVIの例を紹介しましょう。フランス北部に設立された組織で自動車の部品をつくっています。工場もすべて自主経営チームで構成されていて、新しいチームが気に入らなければ離脱して他に移れるというルールがあります。
これは優れた自己修正の形でありとても興味深いです。自分のチームで何か雰囲気が悪くなってどこかうまく行かないとき、離脱できるのです。そういう人が続くと会話が生まれていきます。問題を検討して自己修正し、人が戻ってくるでしょう。

また別の形もあります。リーダーのあなたが誘うのです。前の動画でも紹介したように、メンバーをプロジェクトに“任命”するのではなく誘いを出すだけです。
“これをやるべきだと思うけど参加希望者は?”
多く集まる場合も誰も集まらない場合もあります。それも弱いシグナルです。誰も集まらないなら進めるべきではありません。重要でなく不要なものであるか、重要なのに説得力を持って伝えられてないかですが後者の場合は案に修正を加えれば人が集まってくるはずです。

オープン・スペース・テクノロジーをご存じの方もいるでしょう。人数が多い組織全体でのワークショップの技術です。何らかの問題や対策を検討する場ですが、そこでの原則も“出欠による意思表示”です。
議題は設定されておらず集まった人がテーマを出し合い、テーマごとに散らばって自然にグループを形成し、対策などを語り合うのです。

ほかにも例はあります。
ホラクラシーでは事前に議題の決まったミーティングはありません。これも変に思うかもしれません。
なぜなら良い会議とは明確な議題が事前に決まったものだとされるからです。しかしホラクラシーなどの実践者はこう言っています。
“私たちに必要なのは会議が始まる瞬間の熱量に目を向けることだ。3週間前に議題を決めたとしても、当日にはもう重要度が低下し議論は時間のムダかもしれない。その場で議題を決めることで適切な問題に取り組める”

例はたくさんあります。しかし参加や離脱による意思表示は重要な基本原則であり、参加や離脱は貴重な弱いシグナルなのです。対比してみると効果がよく分かります。従来型組織の運営方法と離脱が推奨される組織の対比です。

従来型の組織においては、無益だと感じる作業にどれほど時間と労力を割いているでしょう?私が参加したプロジェクトでも、正直に言って早い段階からきっと実行されないだろうと感じるものも多いです。どうでもいい作業や仕事が多すぎるのです。
そんなブルシット・ジョブに関する本もたくさんあります。有益でない会議に時間を浪費し、不満を抱く人が多くいます。膨大な時間と労力が浪費されています。

それに比べると時間の浪費がほぼ無くなります。ムダだと思ったら離脱して別の事をできるからです。これも自主経営を理解する要素のひとつです。

なぜ自主経営は驚くほど生産的でパワフルか?
それは生産的でなければシステムが自己修正したり、非効率なものは自分たちでやり方を修正していくからです。

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