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4-4.Self-management: typical issues

4-4-9 危機が生じたとき(In times of crisis)

組織に危機が生じているときに何より明らかになってくるのが、“自主経営がどれほど根づいているか”です。
私の経験では、危機への反応は2つのどちらかに分かれます。

1つは元の状態に戻ることです。人は危機に見舞われると恐れをなして防衛的になり、次のように言うのです。
“いったん自主経営を中止して元の形に戻し、上層部に決断してもらおう”
“上にまた責任を持ってもらい、どうするか決めてもらおう”
それが1つです。

もう一方は、自主経営への理解が浸透している場合です。その場合は先ほどと反対に、必要なものがきちんと分かっています。
必要なものとは、大勢の人の集合知と貢献です。それを使って危機を乗り越えます。

いくつか例を挙げましょう。ビュートゾルフは、自主経営への旅の初期段階で突然、資金難に直面しました。結成された多くの看護師チームは売上をもたらすことができず、経費を使うばかりでした。そして組織が急速に拡大したため、資金難に陥りだしてしまったのです。それが彼らの危機でした。
そこでヨス・デ・ブロック氏は集合知のプロセスに賭け、看護師たちに苦境を相談しました。選択肢は組織の成長を遅らせるか、生産性を上げる方法を探すかです。

たとえば週40時間の勤務時間で、55時間分と言わず60時間分の生産をする方法を考えるのです。すべての看護師に選択肢を伝え、よく話し合って出てきた結果は、世間に求められる限り成長は続けるべきというもので、その選択を尊重し、生産性を上げることになりました。
ブロック氏は反対や意思決定をせず、ただ集合知に委ねたのです。

私の著書では自動車部品メーカーFAVIの成功例を挙げています。第一次湾岸戦争が起き、突然、注文が激減した際のことです。
FAVIを率いるゾブリスト氏は密かに決断して臨時社員を切るのではなく、工場の機械を止めさせました。そして工場の隅で事情を説明し、皆の知恵を借りたところ、1時間とかからず解決策が見つかりました。素晴らしいことです。
断固としてメンバーのことを信頼し、集合知を活用した結果です。

危機は、まさに分かれ道です。
自主経営をどれだけ深く理解しているかが如実に反映されます。誰かが命令を下すべきだと考えて昔の方法に戻っていくか、自主経営を強化していく方向に進むかです。
必要なら外部の人と話すのもいいでしょう。同僚やコーチに相談することも、心の中の2つの本能を整理するのに役立ちます。

やや哲学的ですが、2つのことを加えておきます。1つ目は危機ではないのに危機だと言う人が多い点です。

危機ではなく成長速度が落ちただけだったりします。大きく成長した後で成長が止まったのです。私も、それは本当に危機かと指摘したことがあります。
組織を“生命体”だと考えてみると、生命体の法則に影響を受けます。そうした法則の1つが、成長期間と再生期間です。

美しい例として季節で考えてみましょう。春と夏は急成長し、発展します。一方で、秋と冬には成長のペースが落ちて、死にかけたように見えたりします。
でも、それは自然な再生のサイクルです。たとえば冬であれば、春の成長に備えて密かに多くの準備が行われています。

問題は直面している状況が本当に危機なのか、それとも単に再生の段階かということです。
自分はどう感じるでしょう?価値の成長が減速し、休止している?それとも組織という生命のサイクルにおいて、密かに何かの準備が進んでいる状況でしょうか?

2つ目は、何らかの危機が訪れている場合でもある程度、気楽さを維持できるかです。

もしも心の底から自分の組織が存在目的に基づいて動いていると思う場合、組織をコントロールすることはできないはずです。
あなたでなく、存在目的に照らして物事が進むからです。すべての重荷を背負い込むのはやめましょう。有機的な組織は人間の理解を超えた存在です。

最善の方法は組織とダンスしようとすること。
できるだけ大切にして、健康に育つようにすることです。支配できないものを認め、気楽さを持ちましょう。

組織についてのこの新しい考え方において、最も重要なのは存在目的です。組織自体や組織とチームの生存ではありません。
たとえ組織が死ぬことになっても、その組織を構成していた要素が他の場所で再集結し、よりよく存在目的に奉仕するかもしれません。組織を生命体だと考えるなら、命だけでなく死さえその一部でしょう。

何より重要なのは存在目的であり、組織が生き残るための重荷をすべて自分で背負う必要はありません。
できるだけ組織に耳を澄まし、ケアをしましょう。

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