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4-1.(mis)understanding self-management
4-1-14 自己修正:リーダーの役割(Self-correction: the role of leaders)
前回と前々回の動画が役に立ったことを願います。組織による自己修正がいかに重要か理解頂けたり、自己修正には何が必要か理解頂けたら幸いです。
最後にもう1つ動画を加えておきます。組織のリーダーの役割について具体例を紹介します。
一体リーダーの役割は、自分の組織が従来型から自主経営へと変わり、問題が自己修正される場合どのように変わるでしょう?
従来の組織ならリーダーの役割は明確です。自ら介入して解決したり誰かを任命して解決させます。
それが自主経営になると根本的に変わります。リーダーの役割は“問題の解決”ではなくなり、自己修正できるシステムの構築を手伝うことになります。問題へ自ら迅速に対処するシステムです。
繰り返します。リーダーの役割は問題解決ではなく、システムが自己修正できるよう力を貸すことです。
私は大学病院のCEOと話してそれを思い知りました。
そのCEOの女性は、組織を自主経営への移行に誘っていました。そして問題に直面します。ある1つの看護師チームは仕事量が減少し、人員過多になっていました。看護師たちは暇を持て余していたのです。しかし別のチームは多忙で苦しんでいました。明らかに調整が必要でした。
従来の組織であれば、彼女や看護師長が余ったチームの看護師を多忙なチームに異動させるでしょう。しかしその古い押し付けを彼女は避けようとしました。そこで人員過多のチームへ直接話にいきました。
“明らかに人員過多で作業量も減っているから人員を再配置しようと思う。なのでぜひ教えてください。どうすれば解決できるでしょう?”
彼女としてはこれこそ自主経営でした。トップが押し付けない経営です。しかしチームから案は出ず彼女から声をかけました。するとチームは言うのです。
“人員過多とは思わない”
“このままで問題ない”
彼女は納得がいかず、この組織に自主経営は時期尚早かと感じていました。彼女と相談しているうち私には問いが浮かびました。
自己修正すべき緊張状態はどこにあるだろう?
緊張状態は、仕事が多すぎて苦しんでいるチームと、仕事が少なく楽をしているチームのあいだにあります。その緊張状態を自己修正するべきです。CEOの彼女はその構図のなかにいません。だから彼女が両チームに口を出すべきではなく、“どうするべきか案を出せ”と言っても効果がないのです。
そこで彼女と考えたのがシンプルに会議の場を設けることでした。両チームの看護師に参加してもらい、たとえば両チームから2人ずつの参加を求め、それぞれの作業量を話して理解し合うのです。
想像してみてください。ほとんど仕事がなくて快適なチームにいるとします。CEOに“現状で問題ない”と嘘をつくのは簡単です。でも同僚たちには嘘などつけません。仲間内には必ずバレるものです。病欠の看護師の補充としてやってきた同僚などにはこのチームの仕事が楽だとバレるのです。だから会議で嘘がつけず、問題は解決に向かいます。
リーダーの役割は“慣行化”です。3ヶ月や半年ごとに会議を開けば問題は自ずと解決していくでしょう。自己修正の作用によって緊張が解消されます。
その日私は真に理解しました。
リーダーの役割とは、特に自主経営へと移行中の場合、“問題の解決”ではなくシステムが自己修正できるように構造や慣行などの環境づくりを手伝うことです。
そのためには“システム思考”という能力が求められます。
システムづくりには創造性が必要なので、もし自分があまり得意でないと感じる場合は、組織のなかにそうした思考が得意な人がいればその人と相談しながら例に出した会議のような慣行を考えましょう。
もう1つ同じ病院での例を紹介します。
そこには長く自主経営しているチームが1つありました。看護師長が存在しないチームで、子供が生まれる産科病棟のチームでした。助産師のトップが抜けてからというもの、長が不在のまま自主経営で見事に運営されていました。自主経営の宣伝となるような見事なチームでした。
唯一の問題点が、なぜか結果にあまり責任感を持てないことでした。チームは財務を健全に保たねばならず、年4,000人月で300人以上の出産が必要でした。目標を超えている際は追加のリソースを要求しましたが、たとえば月200〜300人で目標を下回っている際は特に気にすることがなく対策を練らなかったのです。トップが介入して“問題解決”もできますがこう考えることもできます。
“この助産師たちとどんなシステムをつくれば、それぞれが結果に責任を持ち結果に痛みや誇りを感じてくれるだろう?”
出産数が多ければ喜び、数が少なければ必要な修正を自ら加えるのです。
どんなシステムか正解はないので創造的になりましょう。経済面での結果に責任を持たせたいのであれば、毎月異なる助産師たちに集まってもらい、財務会議で結果を発表してもらうのもいいでしょう。
結果が物足りない不健全なもので、病院に損失を与えていても会議に参加する助産師はそれを発表せねばなりません。全員これを経験すればそれで済むかもしれません。
しかしこれは数ある案の1つにすぎません。
結果をボードに貼り出す手もあるでしょう。インセンティブを設けて結果が良ければ設備投資金を多く与えてもいい。それで好きな設備を自由に購入できます。どのチームにも良いアイデアがあり、自然分娩の用具やバスタブなどを増やそうと考えるはずです。予算があれば優れた成績に見返りを与えるのもいいでしょう。案はたくさんあるのです。
今回の動画で理解してほしいのはリーダーの役割の変化です。
これまでのように問題の発生を防いだり、問題が起きたら介入して解決するのではなく、これからは人やチームを手助けしながら自己修正システムをつくる方法や。緊張関係を解消する方法を考えさせることです。
4-1.(mis)understanding self-management
4-1.自主経営についての誤解
- 4-1-1 あなたにとって自主経営とは?(What does self-management mean for you?)
- 4-1-2 「なぜ(WHY)」から始める(Start with why)
- 4-1-3 組織の発達段階と自主経営(How to talk about self-management from all stages)
- 4-1-4 たくさんの誤解(So many misconceptions!)
- 4-1-5 誤解1:自主経営はリスクだ(Misconception 1: It’s risky)
- 4-1-6 誤解2:構造もプロセスもルールも不要(Misconception 2: No more structures, processes, rules)
- 4-1-7 誤解3:トップは意思決定をしない(Misconception 3: No more decisions “from the top”)
- 4-1-8 誤解4:全員が平等(Misconception 4: Everyone is equal)
- 4-1-9 誤解5:権限委譲とサーバント・リーダーシップ(Misconception 5: Empowerment and Servant Leadership)
- 4-1-10 誤解6:コントロールは悪だ(Misconception 6: Control is bad)
- 4-1-11 自己修正システムを理解する(Understanding self-correcting systems)
- 4-1-12 自己修正システムの事例(Self-correcting systems: examples!)
- 4-1-13 自己修正:出欠を通した意思表示(Self-correction: voting with your feet)
- 4-1-14 自己修正:リーダーの役割(Self-correction: the role of leaders)
- 4-1-15 コントロールを手放す喜びと痛み(Top leaders: the joys and pain of giving up control)
- 4-1-16 自主経営の5つの主要プロセス(Five key processes of self-management)
- 4-1-17 システム以外に重要なもの(Focus on mindsets, culture or systems?)
- 4-1-18 支配者文化:システム変革を超えて(Dominator culture: changing systems is not enough)
- 4-1-19 構造はどのように変化するか(How structures typically change)
- 4-1-20 シナジーと規模の経済(Synergies and economies of scale)
- 4-1-21 トップのチームは必要?(Do you need a team “at the top”?)
- 4-1-22 変革の2種類の痛み(Two types of pain along the journey)
- 4-1-23 既存のシステムを導入する?(Adopting a ready-made system?)
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