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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-9 誤解5:権限委譲とサーバント・リーダーシップ(Misconception 5: Empowerment and Servant Leadership)

挑発的なことを言います。私は権限委譲という言葉が嫌いです。サーバント・リーダーシップという考えも嫌いです。
これらは伝統的な組織にとっては、つまり従来のピラミッド型組織には必要です。私が従来型の組織で働かねばならないとしたら、権限委譲やサーバント・リーダーシップの文化があることを望みます。

ですが、それらは自主経営とは違います。ピラミッドに代わるのが自主経営だからです。そのため
“わが社は自主経営を実践し、権限委譲やサーバント・リーダーシップの文化がある”
と聞くと私は
“何かおかしい。自主経営らしくない”
と感じます。実際に、自主経営ではない可能性が高いです。考えてみてください。権限を委譲するということは、いまなおトップに権限が存在することを意味します。その権限の一部を社員に渡すわけです。
自主経営の場合、権限は組織に組み込まれています。組織の構造上、各自が権限を持つのです。サーバント・リーダーから社員へ権限を与えるのではありません。

サーバント・リーダーシップについても考えてみましょう。これも階層型組織にとっては素晴らしいものです。メンバーに奉仕するためにリーダーがいるという考えです。
しかし自主経営という観点から考えると、少なくとも私にはとても父権的に感じられます。つまりこの“サーバント・リーダーシップ”とは、“社員には自分の奉仕が必要だ”という考え方でもあるのです。それは率直に言って、ある種のエゴを招く危険があります。
“自分はもう英雄的で独裁的なリーダーじゃない。もうピラミッドの頂点には立っていない。しかし、いまの自分は特別なんだ。サーバント・リーダーだからね。わが部下たちのことを思い、とことん尽くしている”
こうした言い方には“うわっ”と思います。
“わが部下たち”? “尽くしている”?
まるで“自分は特別だ”と言っているようです。“地位の異なる私が奉仕している”という発言に聞こえます。

自主経営では考え方が違います。
リーダーが奉仕するのは組織の存在目的です。組織の存在目的に尽くすのです。

社員は自律しているので、奉仕の必要はありません。社員は権限を持ち、助言プロセスで変化も生み出せます。リーダーからの奉仕は不要なのです。奉仕の否定ではありません。病気の人にとって奉仕は役に立つことです。しかし社員は病人ではなく奉仕は不要だと思います。
“全員が一体となって存在目的に尽くす”
それが美しいことです。以上が私の考える“サーバント・リーダーシップ”です。

全員がサーバント・リーダーとして存在目的に尽くすのであり、ピラミッド下層の弱い人に奉仕するのではありません。もし権限委譲やサーバント・リーダーシップという表現を使い続けるなら、自主経営が実践できていない可能性が高いでしょう。おそらく、あなたの理解や考え方が完全には自主経営に切り替わっていないのです。
それは変革の過程なので問題ありませんが、どうか自主経営を実践しているとごまかさないでください。なぜならあなたの行動は善意という形をとった独裁であるからです。

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