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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-8 誤解4:全員が平等(Misconception 4: Everyone is equal)

“自主経営では全員が平等だ”という意見をよく耳にします。フラットで水平的な組織だ、と言うのです。
私はフラットや水平という言葉が好きではありません。誤解があると感じるからです。自主経営組織の平等をめぐる誤解です。平等に関しては、正しい認識が重要になります。次のように認識するのが最善でしょう。

つまり自主経営組織においては、確かにメンバー全員に等しく価値があります。
しかし役割や貢献の仕方は、大きく異なります。価値は平等で、役割や貢献の形は異なるのです。詳しく説明しましょう。

“価値は平等”という意味は、誰もがかけがえのない人間だということです。
本質的に等しい価値があります。組織の誰であろうと、役割が何だろうと、人間としての尊厳を持つ根本的に等しい存在なのです。
だからこそ誰もが同じルールに従うべきです。カースト制度のような区別はもはや容認できず、役職によってルールが違ってはいけません。ルールが同じであれば誰もが変化を先導できます。助言プロセスなどで、誰もが等しく力を持てるのは素晴らしいことでしょう。誰もが自分の力を発揮して輝くことができるのです。自分や周りのためにです。それが価値の平等です。

役割や貢献の違いとは、純粋な事実に関するものです。
どんな議題であったとしても必ず、周りより多くの専門技術や、エネルギーや、熱意や、知識を持った人が存在します。私はマーケティングの門外漢なので、その分野の問題については私に聞かないでください。私は技術の人間でもありません。機械の点検や修理において私の出番はありません。
つまり何が言いたいかというと、役割は平等でないのです。

組織の目標は、各自ならではの力や技術を発揮してもらうことです。
たとえばビュートゾルフを例にとりましょう。看護師チームのなかに紛争解決や仲裁が得意な人がいるなら、その役割はその人に任せるのです。プランニングが得意な人がいるなら、休日や休暇のスケジューリングをその人に任せましょう。
どの組織のどんな問題でも適任者は自然に現れるのでその人に託しましょう。

そして次の違いは、非常に重要です。支配型の階層と自然階層の違いです。
階層が嫌で全排除するというミスを犯してしまうのは、階層が2種類あると知らないからです。排除したいのは、支配型の階層です。肩書きが上の人間が、部下に力を行使する形です。
一方で、組織に残すどころか推奨していきたいのが自然発生型の階層です。自然の階層とは、自分が得意な分野を先導し、得意でない分野は他の人に任せるというものです。

力で押し付ける支配型の階層を撤廃した組織では、自然な階層がどんどん発生してきます。これまで抑制されていたような、才能やエネルギーや情熱を発揮できるようになり、各人がこれまでにない成果を生んでいくのです。
そのため、目標は“全員の平等”ではありません。人としては平等ですが、役割や貢献の形は異なります。各自が最大限に活躍することが大切です。だから避けるべきは、こう言って適任者を退けることです。
“あなたが決めるべきではない”

一方、適任でない人に強制してもいけません。
私が機械オペレーターだとします。所属する組織が自主経営型に変わり、自分の権限で新しい機械を買えるようになりました。調査を任され日本やドイツの業者を訪ねる。素晴らしいことです。これまで不可能だったことが可能になったのです。
しかし、強制は避けるべきです。自分の技術や情熱を注げないなら、人に任せましょう。他の作業員でもエンジニアでも構いません。

重要なのは全員が同じ力を持つことではなく、各自が得意分野で最大限を出すことです。その違いが重要です。大切なのは力の均等化ではなく、それぞれが自分の力を発揮することです。
自主経営ならそれが可能です。

自然界にたとえると、よく分かると思います。
森のような生態系では様々な生命の形や姿があります。キノコやシダが、木よりも高く育つことはありません。そしてそれで良いのです。キノコに木と同じ高さは要求できません。でも木より幅の広いキノコはあります。シダは備えた美しさを発揮しているかが問題です。そしてどの種も不可欠です。どれか欠けると生態系全体が壊れます。だから高さだけで一面的に見るのはバカげています。

本当に大切なのは、全員が自分本来の力を存分に発揮することです。
それこそが重要だと思います。

だから水平やフラットでなく、活き活きとそれぞれの方向に力を発揮してほしいのです。ぜひとも違いを認識しましょう。人間としての価値は平等です。その一方で役割や貢献の形は人によって大きく異なります。

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