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4-1.(mis)understanding self-management
4-1-21 トップのチームは必要?(Do you need a team “at the top”?)
自主経営組織の多くにはいまもトップチームがあります。一方トップチームのない自主経営組織もあります。これは語るべき興味深いテーマです。
もちろん“トップ”という考え方は自主経営には適しません。ソシオクラシーやホラクラシーでは“ゼネラルサークル”などと呼ばれます。ニールス・フレギングはいつも組織を説明する際に、意思決定チームを中央に円で描き、直接顧客やクライアントとやり取りをする前線の仕事はその円の周りに描いています。
ここで指摘しておきたいのは、いまも自主経営組織の多くには広い観点から管理を行う機能が存在しており、営業・財務・マーケティングそして製造などを統括しています。チームの形をとっていることも多いです。
よくある例を紹介しましょう。100〜200人規模の小さな製造会社で3〜4つの製造チームや営業チーム、財務チーム、エンジニアチーム、人事チームなどがあるとします。
自主経営の場合であれ、よく見られるのはその各チームから選ばれた代表者による統括チームの形成です。トップチーム、ゼネラルチーム。呼び名は何でも構いません。そんなチームは多くの自主経営組織に存在します。
製造業を例に出しましたが、学校組織でも同じです。学校組織というものも理科、国語、美術などの部門がありますが、各部門から集まった統括チームが全体の調整を行うのです。
以前の動画でお話ししたように当事者意識を持てる機能横断型チームが大切なので、私なら統括チーム制で学校運営はしません。
本で紹介したベルリンの学校の方が理にかなっています。その学校では、複数の教師で複数のクラスのすべてを担当します。美術、理科、国語といった機能ごとの分担ではありません。
そこで問題になるのが、代表を集めたトップチームは必要なのかという点です。どのような必要があって、各機能が週ごとや月ごとに集まるのでしょう?
この質問をしたのは、自主経営には使えないからではありません。むしろ最善の方法だからです。
トップチームがあると自主経営できないなど、誤解です。
このチームが周りに何かを命じる権限を持たず、助言プロセスを使ったり同僚間による評価を導入していれば、トップチームは集まって包括的な議論をするだけであり、話し合った内容を誰かに強制することはありません。
つまり完全な自主経営組織でありながら、代表者チームを持つことができるのです。全体にとっての上位階層だと考えるといいでしょう。周りに行使する力を持たない階層です。
しかしなぜそうしたチームが必要なのでしょう?
多くの場合こうしたチームはかつての経営委員会の代替として置かれています。そうしたチーム抜きの運営を想像しにくいからです。
運営は次のような形になります。どの組織でも包括的な議論をすべき瞬間は訪れます。組織全体に関わるような議論です。そんなときに集まるメンバーが必要になるのです。しかしどのテーマでも同じメンバーにする必要は?こうしたチームをより効果的にするには、その都度テーマに合わせてチームを形成するといいでしょう。
たとえば誰かが感じたとします。
“自主経営に慣れていけるようオンボーディングが必要だ”
こうした内容に関心を持つ人もいるでしょう。この会話に参加したい人はあちこちにいるでしょう。そういう人たちに自発的に参加してもらうのです。
そしてたとえば財務など別のテーマが持ち上がったら、また新しい人たちを集めましょう。そのテーマに関する経験や専門知識や情熱を持つ人、周りへの普及を目指す人などです。それはより流動的な調整会議と言えます。
そうすれば代表者制度より多くの人が関われます。代表者制だと関心や知識がない議題でも同じ人が集まったり、ただ座って会議をやり過ごしたりすることがあります。
こうした流動的なチームには利点と欠点があるので明確にしておきましょう。利点は4つあると思います。
利点の1つ目は、いつも同じ面々の固定チームを持たないことで”仕事を増やしてしまう”という症状を防げます。
これはビュートゾルフのヨス・デ・ブロック氏の話で知りました。彼の話によると、経営層やスタッフ機能など全体を見る仕事の人は、仕事を増やしがちだと言います。
彼は説得力のあるエピソードを語ってくれました。初めのうちビュートゾルフでは、彼とコーチたちが月に一度会議をしていました。10〜12人の各看護師チームが自主経営しており、必要があればコーチたちがチームをサポートしています。コーチたちは俯瞰的な視点からチームの状態や問題を眺めています。そうしてブロック氏とコーチたちは毎月点検するのです。
“状況はどうだろう?何が好調で何が問題?”
しかし月に一度集まっていると余計な仕事を増やしだすのです。
“オンボーディング・プロセスに改善を加えてみよう”
“リーダー研修をしようか”
“ITシステムにあれを加えるといいのでは?”
彼らは組織のために良かれと思って企画や改善案をあれこれ出しますが、現場には不要な案かもしれません。気持ちはよく分かります。たとえば私を会議室に入れたら良いと思う案をいくつも挙げるでしょう。
でも本当に必要でしょうか。自分の案に浮かれているだけかもしれません。そこでヨス・デ・ブロック氏はこの会議をやめました。余計な仕事を増やさないことにしたのです。
それが1つ目で、2つ目もこれに関連した長所です。
メンバー固定の代表者チームをつくると、周りから力を奪って無力化してしまうことになり他のチームが動かなくなります。
ビュートゾルフがあの会議を続けていたとしましょう。私が看護師チームの一員でオンボーディングを改善したい場合、“オンボーディングを改善して”と上にせがんで終わるでしょう。これが階層構造だと思って遠慮してしまい、自分は無力だからとただ上に任せるのです。
ビュートゾルフはその会議を廃止したので、私が何か改善したいと思ったら周りに声をかけねばなりません。
“改善が必要だと思うけどみんなはどう?”
答えがイエスなら志願者チームを募りましょう。代表チームがないことで、組織の他のメンバーたちが自分の力を発揮して会議を呼びかけたり参加したりするのです。それにより権限の分散が実現します。
3つ目です。代表チームがないことで組織の集団的な知性をより活用することができます。代表チームがあるとそのメンバーたちは自分たちが組織の代表なのだから自分たちで考え決定できると思い込んでしまいます。助言プロセスがあってもです。
でも考えてみてください。そのチームがする議論は組織にとってとても大切なものです。戦略やビジョンに関わります。
“この大きな決断どっちにする?”
しかし助言プロセスの方が、いつ何時であっても少数の代表チームより多くの人が参加できます。参加者が多い方が専門知識が得られ、決断に反映できます。代表チームを持たないことで何か議題が生じたときに、たいていの場合組織のより広い分野に声をかけて議論に参加してもらえます。
つまり組織の集団的な知性をより良く活用できるのです。
4つ目の利点は、テーマごとに違うメンバーが集まって話し合うことによって、組織に生まれるのがこれまで以上にきめ細かな人間関係のネットワークです。相手のことや相手の長所に詳しくなっていきます。
それは大きな利点なので6〜8人だけが集まって、そのいつものメンバーだけが事情を深く知り、残りの社員は力を合わせないよりはチームをなくして知識のネットワークをつくった方がこれ以外の場面でも組織の役に立ちます。
これらがトップにチームを置かない4つの利点です。
欠点は少なくとも2つです。1つ目はチーム形成です。
固定メンバーなら勝手が分かってきます。毎回違うグループだと最初に互いのことや相手のやり方を知らねばなりません。
2つ目は継続性です。固定メンバーなら議論するたびに内容が蓄積されていきます。メンバーが変わる場合蓄積はされません。
とはいえ利点の方がはるかに大きいので、ぜひとも次の問いを考えてみてください。
トップに専属のチームを置かずとも運営ができますか?
組織全体に関わる問題に取り組む専任チームのことです。ソシオクラシーやホラクラシーの組織には大変な挑戦です。なぜかと言えば、中心のゼネラルサークルに人を固定できないからです。必要に応じて集まってきた人がゼネラルサークルの役割を果たしていくのです。それがソシオクラシーやホラクラシーでの方法のひとつです。
まだ自主経営への移行が完全ではなく移行の途中でありながら、経営委員会を廃止する組織も多いです。しかし撤廃してしまうのは早すぎるかもしれません。ある組織の試みは興味深いものでした。経営委員会が集まって話し合ったのです。
不要になるまでしばらくは継続すべき役割は何だろう?
もう必要のない役割は?
詳細は忘れましたが3つ取り決めました。
“全体の戦略を検証する”
“全体の財務を確認する”
そうした部分はまだ統括することにしたのです。
そして業務に関する決定は行わないことにしました。それは必要な人が自発的に集まって助言プロセスで決めるのです。自主経営への移行中に使える方法だと思います。
やがてそうしたやり方が機能していくとトップのチームが不要になるでしょう。適した人が必要に応じて集まって全体に影響する決定や調整を行えると信じられるのです。
4-1.(mis)understanding self-management
4-1.自主経営についての誤解
- 4-1-1 あなたにとって自主経営とは?(What does self-management mean for you?)
- 4-1-2 「なぜ(WHY)」から始める(Start with why)
- 4-1-3 組織の発達段階と自主経営(How to talk about self-management from all stages)
- 4-1-4 たくさんの誤解(So many misconceptions!)
- 4-1-5 誤解1:自主経営はリスクだ(Misconception 1: It’s risky)
- 4-1-6 誤解2:構造もプロセスもルールも不要(Misconception 2: No more structures, processes, rules)
- 4-1-7 誤解3:トップは意思決定をしない(Misconception 3: No more decisions “from the top”)
- 4-1-8 誤解4:全員が平等(Misconception 4: Everyone is equal)
- 4-1-9 誤解5:権限委譲とサーバント・リーダーシップ(Misconception 5: Empowerment and Servant Leadership)
- 4-1-10 誤解6:コントロールは悪だ(Misconception 6: Control is bad)
- 4-1-11 自己修正システムを理解する(Understanding self-correcting systems)
- 4-1-12 自己修正システムの事例(Self-correcting systems: examples!)
- 4-1-13 自己修正:出欠を通した意思表示(Self-correction: voting with your feet)
- 4-1-14 自己修正:リーダーの役割(Self-correction: the role of leaders)
- 4-1-15 コントロールを手放す喜びと痛み(Top leaders: the joys and pain of giving up control)
- 4-1-16 自主経営の5つの主要プロセス(Five key processes of self-management)
- 4-1-17 システム以外に重要なもの(Focus on mindsets, culture or systems?)
- 4-1-18 支配者文化:システム変革を超えて(Dominator culture: changing systems is not enough)
- 4-1-19 構造はどのように変化するか(How structures typically change)
- 4-1-20 シナジーと規模の経済(Synergies and economies of scale)
- 4-1-21 トップのチームは必要?(Do you need a team “at the top”?)
- 4-1-22 変革の2種類の痛み(Two types of pain along the journey)
- 4-1-23 既存のシステムを導入する?(Adopting a ready-made system?)
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