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4-2.Self-management: getting started

4-2-11 サポート機能はどうなる?(What to do with support functions?)

自主経営に移行するとサポート機能はどうなるでしょう。
小組織でない限り、サポート業務を担うスタッフがいるはずです。大所帯となればサポートに特化したチームも作られます。基本的には本社勤務です。人事、財務、会計監査、危機管理、コンプライアンスなど数々の部門があります。

しかし、自主経営に移行すると権力関係が大きく変わります。
大半の従来型組織ではサポート部門が強い権力を持っています。現場チームの上に君臨しているのが実情です。チームの役割や業務を割り振り、裁量の範囲を決定しているのです。
ですが自主経営に移行すると、彼らは真のサポート機能へと回帰します。チームをサポートするのみで権力を行使しません。

FAVIでは“逆委任”という考えがあります。何でもこなせる自主経営チームでも、無理なことやよそに任せたいことは“上”に委任できます。階層的な言葉をやめ“外部委任”とも言えます。

素晴らしい実例をこちらの本で読みました。『自主経営組織のはじめ方 現場で決めるチームをつくる』です。著者のアストリッドとベンは、ビュートゾルフで自主経営への移行を支えた2人です。この分野には多くの専門家がいますが、67ページに面白い記述がありました。

“自主経営の組織でスタッフが手放すべきものは、仕事の質への責任と自分たちに説明責任があるという考え方です。
その責任は作業員が負うのでスタッフは自分の助言に責任を持ちましょう”

ここで注目したいのは、現場の作業員に仕事の質を任せている点です。サポート機能が与える助言にも言及していました。
面白いのは彼らの視点です。サポート機能を単一の職務内容ではなく、きめ細かな役割に分けて見ているのです。マネジャーにも決まった職務内容ではなく、さまざまな役割があるのと同じです。

もう少し詳しく見るなら、4つのレベルに分けて考えるのが役立ちます。サポート機能は、日常的に4つの役割を担っています。

著者たちが語る1つ目の役割は、専門知識や助言を提供することです。

自主経営になって大きく変わるのは、助言がトップではなく“タップ”から出ることです。栓をひねればビールが出てくるように欲しい時に助言をもらえるのです。ただしトップからではありません。

一見些細なことですが、これをビュートゾルフは非常にうまくやっています。ヨス・デ・ブロックは当初あることを懸念しました。専門部門にいる専門家たちが知識を持つがゆえに権力を振るうかもしれない。
そこでビュートゾルフでは、専門部門を設けない方法を模索しました。その中から面白い方法を2つ紹介します。

1つは専門家を外部から呼ぶことです。
ある時ビュートゾルフは雇用法の専門家が必要になりました。弁護士の雇用も考えましたが、この時は“多少高くても外部に委託すべきだ”という結論に達したのです。
それに外部の人間と組むとリスクも減ります。外部の人間ならチームに対してあれこれ指図してこないからです。

もう1つ同社が実践する賢い方法は、専門知識を持つ看護師を集めることです。
従来の看護組織には少数の医師と専門家がいます。ですがビュートゾルフは、看護師たちの専門知識を活かしています。呼吸装置のことを知り尽くした看護師もいれば、特定の症例に詳しい看護師もいます。あとは互いを見つける方法を考えるだけです。イントラネットやSlackを適宜活用して、見つける方法もあるでしょう。
一方多くの組織では、各チームに専門家が属しています。そしてそれぞれのチームに属する専門家たちが、随時立ち上がるオンラインチームで集結するのが一般的です。
これが“タップ”からの助言です。

サポート機能が果たす2つ目の役割は、基準や方針そしてルールやガイドラインの策定です。

“自分たちの方針はこうだ”と決める。
この役割は決して外部のサポート機能に頼れることではありません。それが自主経営のあり方です。チームで定義すべきことなのです。

何度か紹介しているAESは、世界中に発電所を持つ電力会社で実にうまくサポート機能が働いています。
人事、メンテナンス、危機管理などの部門がなく有志によるタスクフォースだけが存在しているのです大半の発電所において、何かしらのタスクフォースに参加している従業員がいます。

たとえば危機管理もその1つです。そのタスクフォースは、本部にいる人間よりも現場に適した規則や方針をつくれるのです。それによりチームは力を発揮できます。
すべての発電所の実態に即した賢明で具体的な規則をつくれるからです。
オフィスで作る規則なんて、ウズベキスタンの現場では的はずれな場合があります。

サポート機能が果たす3つ目の日常的な役割は、策定したルールなどを確実に実行させること。つまりコントロール機能です。

ルールの策定よりは重要度が低いかもしれません。自発的に集まったタスクフォースのチームが方針や機能を定義したあとは、自分たちと利害関係のない人に実践の確認を頼んでもいいでしょう。
さらに賢明な手段はチームに責任を持たせることです。AESではチームが互いに監査しています。毎年ランダムな相手のチェックをするのです。

サポート機能が果たす4つめの役割は、現場チームに代わって彼らのために働くことです。具体的には管理業務などチームでやるのが効率的ではない業務です。

たとえば人材採用であれば、チームで行うのが必須です。しかしメンバーの報酬や福利厚生であったり、細かい管理業務となると話が違います。税金や銀行などに関する専門家をチームごとに育成するなんて割に合いません。
だからそのための専門チームを作るのです。これぞまさに“外部委託”ですね。3~4人のチームを作って一任すれば合理的でしょう。彼らも自主経営チームになれます。純粋に他のチームへのサポート機能を担うだけで、規則や方針の決定はしません。

このようにサポート機能の役割は変化していくと思われます。
更なる変化もあり得ます。かつて本社や中枢にいたスタッフを現場チームに転属させるのです。
以前も触れましたが、自主経営の理想はチームがすべてのリソースを有し、自律的に顧客との業務を最初から最後まで担当することです。そこで、サポート部門にいたスタッフをチームに編入させるのです。

たとえば工場チームなら仕入れ担当者を必要とするかもしれません。メンテナンス担当者が欲しいチームもあるでしょう。そんな時に本部のサポートスタッフたちをチームに編入していくのです。本人たちも仕事が楽しくなるはずです。

本の中から紹介したいアイデアがもう1つあります。
大組織に向けたものですが“サービスセンター”なるものを設置することです。

詳しく説明しましょう。たとえば10万人ほどの工場を展開している組織には、いろんな専門家がいるはずです。ただし各地に点在していてどう探せばいいかわかりません。欲しい助言にたどり着けないのです。

そこでサービスチームの出番です。常駐の対応スタッフを2人ほど置くのです。
“これについて助言が欲しい”
“それならドイツのピーターと話してみて”
という具合です。彼らが相談窓口として、組織内の専門家につなぐのです。実践している会社があるかわかりませんが大組織に役立つアイデアだと思います。

これがサポート機能の変化です。
そして次なる問題は、人間的な観点から何が起きるかです。

“自分はかつて本部にいたが今やパワーバランスが変わった。今後は現場に配属されるかも”
人によってはこれはつらい経験です。すぐ対応できる人も対応に苦労する人もいます。
“私はかつて本社で人事部長を務め自分が持つ力を感じていた。なのに今後は現場に任せて自分はサポートだけ?”
この変化が耐えがたい人には管理職と同じで従来の役割からの決別が必要です。

しかし新しい役割を試した途端、大半の人は新たな働き方が好きになります。
チームとじかに触れ合うようになり、さらなる貢献ができるのです。本社のいざこざから解放され分業的に働くことも減ります。そして、他者に貢献して支えることが素晴らしいことだと気づくのです。

誰かに貢献することほど素晴らしい生き方はありません。過去の役割と決別したあとでサポート機能の真の美しさに気づくことでしょう。

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