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4-2.Self-management: getting started

4-2-12 新しい慣行の公式化(Formalizing new practices)

自主経営への移行で、実に多くの慣行やプロセスに変化が生じます。従来の階層的な働き方が変わるため、慣行やプロセスの更新や再発明が必要です。
問題は新しい慣行をどう公式化するかです。
いつ公式化し、どう伝えていけばいいでしょう?

それについてお話ししますが、その前に大切なのが慣行やプロセスの“公式化”とは何かを考えることです。

なぜなら誤解が散見されるからです。規則や方針やルールに満ちた従来のやり方を嫌がるあまり、公式化を断固として拒み文書化を避けようとします。意思決定や問題解決は“こうすべきだ”と定めるのは古い慣習だと避けたくなるのです。

しかしそうは言うものの、新しい慣行を明確に公式化しなかったらとても大変になります。毎回新しいやり方だとメンバーたちは
“どうすればいい?” “こうするんだっけ?”
と迷い、誰も正解がわかりません。だからここはシンプルに明示しましょう。
“やり方はこうです”

たとえば、朝目を覚まして、棚にある靴下やシャツの位置が明確な方が便利なのと同じです。寝ぼけていても靴下やTシャツを出せます。もし毎日位置が変わると、毎回靴下を探さねばならず不便です。
慣習やプロセスでも同じです。

しかし従来と大きく違う点が1つあります。
これまでの慣習やプロセスは、階層のトップやサポート機能が定めていました。それは押し付けに感じられ変更の権限もありません。
一方自主経営型の組織では、誰でも変更を加えられます。

“公式化”した案はよりよい方法が出るまでの暫定的な案です。つまり“今の最善”です。
現状の最善案を文書にしておき、よりよい案がでたら変更する。
そうすれば助言プロセスなどを用い誰もが力を発揮できます。誰もが自分の力で改善や変更を促せます。靴下やシャツの位置が決まっていても、よりよい配置があれば変更するというわけです。

組織によっては“プロトタイプ”だとか“ベータ版”と呼んでいてこちらの方が腑に落ちます。ベータ版がずっと続くイメージです。
常に進化するものであり、現在の最善案にすぎないのです。

カナダのFitziiという小さな組織は、彼らの自主経営への移行過程をブログに記しています。見事に書かれているので、ブログの文章を読み上げたいと思います。新しい慣行やプロセスの公式化に関する文章です。

“決めたら終わりではありません。新しい自主経営の慣行の導入にはいくつかの段階があります。
まずは新しい案の誕生、それから試用期間。
そして話し合い改善していくのです”

何らかの案から始め、改善を続けていきましょう。
頭を切り替えて、公式化を役立つものと捉えてください。ただしその案は“今の最善”で常に改善が可能です。

では最初の問いに戻りましょう。いつ公式化する?
私の答えは“可能な限り早く”です。何かを始めたらすぐに文書化です。

“これが現状の最善案です”
“新たなスタンダードですがいつでも改善可能です”
最善案はチームごとに違うかもしれません。各チームが独自の最善策を見つけるのは価値あることです。2-6の動画などでも語りました。革新と標準化の緊張関係、あるいは実験と標準化の緊張関係です。

もちろん全チーム同じにする方がいい時もあります。たとえば靴下とシャツの話なら、どのチームも同じ場所にあった方がやりやすいはずだからです。
いずれにしても、新しいことを始めたら文書化して改善していきましょう。

2つ目の問いは“どうやって定義するか”です。
その答えはもちろん、“従来の管理職やトップに定義させないこと”です。

現場のチームが自分たちで慣行を定めましょう。全体で同じ慣行を実施すると決めている場合は、有志を募って新しい慣行を決めてもらいましょう。
“意思決定の新しい方法を考えたい人は?”
そうしてチームが結成され助言プロセスなどの案を検討する。彼らが半日や1日熱心に話し合い、“こうやりたい”と決めるのです。

そうやって全プロセスを決める小さな組織もあります。
たとえば20人の組織なら、全員で1日集まってどのプロセスを決めるか自分たちで選び、意思決定や勤務評価について全員で話し合い“ひとまずこれで行こう”と決まるのです。

面白いことに、初めはメンバーたちに、細部にこだわりすぎるなと伝えた方がうまくいきます。最初は細かい慣行より原則を考えるとよいでしょう。
デカトロンという組織を例に挙げると、彼らは全会議をチェックインから始めると原則に決めました。でもチェックインの細かな方法は決めず、チェックインがあればひとまず良しとしたのです。
初めはやりすぎに注意しましょう。

3つ目の問いは、いくつかのチームで何らかの慣行が決まったとして、“どうやって文書化し伝えていく?”決定に関わらなかった人にどう伝える?

私からの提案は、従来の味気ないメモのような文書を避けることです。2-14の動画で新しい伝え方について語りました。
ポイントはビジュアルを意識することです。
インフォグラフィックやイラストを活用したり、デザインに長けた人に助けてもらいましょう。内容はすぐ変更になりうるので凝りすぎは禁物です。
動画も役に立ちます。ボードを囲んで頭を悩ませ意思決定手段を決めたなら、ボードを使って全体への説明を動画で撮影してもいい。それをみんなに送ったり社内wikiに上げたりするのです。
味気ない伝え方は避けましょう。進化や変更が可能な生きたものとして伝えるのです。

そしてよく聞く質問が“どの慣行から始める?”という問いです。

もちろん組織によりますが、自主経営においては5つの主な慣行を語った4-1-16の動画を参考にしてください。5つの主な慣行を簡単に挙げておきます。
1意思決定、2“役割”への移行、3紛争の解決、4情報の透明化、5実績管理です。
この5つを考えてみることをお勧めします。この5つから始めるのは役に立つでしょう。遅かれ早かれぶつかるトピックだからです。

楽しみながら進化する生きた取り組みにすれば、現段階での最善のプロセスがすぐに決まるでしょう。“今の最善”として文書化し動画で説明を撮影し、味気ないメモではなくイラストなどを活用しましょう。
そこから改善を進めるのです。

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