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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-7 誤解3:トップは意思決定をしない(Misconception 3: No more decisions “from the top”)

私が見た複数の組織で、リーダーがこの落とし穴に陥っていました。その落とし穴とは、CEOや経営委員会など以前の制度のリーダーが、自主経営に移行した途端リードしなくなることです。身を引くわけです。
それも理解できます。昔のシステムでは、彼らが重要な判断の決定や承認を行っており、すべてが階層の頂点に集約されていました。しかし新制度になるなら旧態から脱却すべきです。だからトップはもう意思決定を下さず、すべてボトムアップにしようとします。もちろんそれは悲劇的なまでの誤解です。

その誤解を理解するためには、使う言葉を変えていく必要があります。
“トップ”と“ボトム”という考えをやめるべきです。

自主経営組織にはトップもボトムもありません。全員が同じルールのもとで動きます。たとえば意思決定なら、助言プロセスなどの自主経営的な意思決定手段のもとでは全員同じルールで動き、誰もが同じステップを経て決定を下します。
以前のシステムでは、ピラミッドの下層(ボトム)の人は、重要な意思決定に関与する権限はありませんでした。それは自分の上司に相談するものであり、上司の手に余る場合はさらに上へと送られます。そして下層の人が関われない状況になっていくのです。すると多くは無力感を抱くようになり、無意味なので提案自体しなくなります。

そうしたすべてが変わります。“トップ”と“ボトム”という考えは合いません。
私は“個別”と“俯瞰”という考えが良いように思います。

もちろん個別の役割を持ち続ける人もいます。たとえば機械オペレーターは個別の役割です。特定領域の仕事だからです。ソーシャルワーカーも個別の役割ですし、営業員や教師だって、個別の役割と言えます。
一方で広い役割を担い、組織を俯瞰で見る人もいます。新工場を設計する人もいれば、マーケットの動向を注視しながら自社への影響を見極める人もいます。それらはより俯瞰的な役割です。どの組織にもその両方が必要です。
多くの人が個別の作業に従事する必要があります。それで仕事が動いています。一方で、組織のことを俯瞰的に考える人も必要です。

なので昔のトップリーダーが突然沈黙して姿を消してしまうと、それはつまり組織を俯瞰で見る人が不在になるということです。
もちろん、時が経てば多くの自主経営組織で、俯瞰だけの役割は減るでしょう。やがて成熟していくと、個別の役割を担っていた人の多くが、問題などに直面して俯瞰的な視点を持つようになりますがそれには時間がかかります。学習する時間が必要になるからです。自分も俯瞰でき、役割を担えると学ぶのです。だから初めのうちは全体を俯瞰するリーダーが必要な場合が多いのです。
そんな人たちがいなくなるのは誰にとっても損です。俯瞰で見る人が不在となり、組織にとっても損です。リーダー本人にとっても損です。

その落とし穴に陥ったリーダーたちに話を聞くと、ボトムアップ型なので身を引くと言うので私は尋ねました。
“自分の力が発揮できていないとかもっと貢献できると思いません?”
答えは心の底からの“イエス”。渋々ながら我慢して身を引いていたのです。

個別の役割の側にも同じことが言えます。その人たちが困惑するのをよく目にしました。
“昔のトップダウン型のリーダーたちはいなくなって静かになったけど、自分たちは何をすればいいのだろう?何をどうしていけばいいか分からない”
それもまた残念なことです。
元リーダーたちは、とても効果的に新しいモデルを活かすための見本を示せるのです。個別の仕事を担っている人の方が、助言プロセスの機能を理解しにくいのは、見本がないからです。だから元リーダーの発言は効果的です。

“その問題については何かを変えるべきだ。あっちの方向へと進んでいこう。でも昔のようなトップダウン型ではなく助言プロセスでいこう。やり方は…”
元リーダーが見本を示すと大きな引き金になります。
“そうかこうやるのか。助言プロセスの方法は分かったから自分が意思決定するときも真似してみよう”
このようにリーダーの地位にいる人も意思決定ができます。助言プロセスさえ使えばいいのです。

リーダーの声は必要であり、何より愚かなのは、経験や年齢を重ねたメンバーが貢献できなくなることです。押し付けではなく、周りと同じルールで伝えましょう。
では具体的に元リーダーは何をすべきでしょうか?少なくとも3つあります。

1つ目は、たとえば昔のように誰かから意思決定に対する承認を求められたらしっかり伝えることが大切です。
“もう承認は必要ない”
しかしそれで去るのではなく、助言プロセスのような意思決定法を伝えたうえで、コーチしてもいいでしょう。

“この問題については誰々の意見を聞くといい”
“関係する誰々には話しておくべきだ”
“自分が専門家や関係者ならこう助言する”
“でもこれは命令でなく1つの意見だから他も参考にしながら決めてほしい”

1つ目。求められても承認せずコーチングすること。

2つ目です。多くの組織では会議のような場所が設けられ、そこで意思決定が承認されます。
組織に根付いた“承認”の会議は解体していきましょう。そして、助言プロセスなどでの意思決定を促しましょう。

3つ目は、周りと同じでリーダーも緊張や問題や機会を感じ取り、変化が必要だと思ったらその貴重な意見を伝えましょう。
自分の意見を出して変化を実現させるのです。助言プロセスなどの意思決定法を使って、プロセスの使い方の見本を示しましょう。その姿を見て組織も新しい制度に慣れていくのです。

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