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2.Perspectives on the journey

2-16 取締役会の役割は?(What roles for the board?)

営利・非営利を問わず、取締役会の役割は何でしょう?“ティール組織”における取締役会の役割は?どうすればリーダーは取締役会を従来の形から新しい形に変えられるでしょう?取締役会の影響力は強いので重要な問題です。しかしこのテーマは研究途上でもあるので、私にはまだサンプルが少なく数年後には内容が増えるかもしれません。今回は現在の知識を話します。詳しい人はどうかコメント欄などで意見をお知らせください。組織が変革に取り組むなかで、昔ながらの考えの取締役会に苦労する場合があります。

ビュートゾルフのブロック氏の例を紹介します。彼は最初の頃、役員会のメンバーを専門知識で選んでいました。財務の専門家や医療や行政の専門家といった形で、バラバラな人物を選んでいました。しかしその役員たちは変革を理解せず、ブロック氏に尋ねるのです。ビュートゾルフの理念にない“計画”や“予測”といった内容をです。それで役員への対処が重荷になっていた。それから彼は何とか少しずつ、役員を徐々に入れ替えていき、現在は彼を支える役員を得ています。あなたの旅でも起こり得ることなので、機会を見つけて理念に合わない人は緩やかに入れ替えましょう。

別の取締役会は、上場している企業でしたが役員たちは理念を理解せず、それでも業績は良かったのでテコ入れをしませんでした。計画や予算について役員が出してくる意見も、最適な解決策には感じられない。それでもある程度機能するので、そのままにして手をつけていなかった。業績の良さに満足していたのです。確かに大きな変化を起こすのはリスクです。階層の廃止は取締役会の動揺を生むので、長期的な意味での解決策とは言えません。そのためとても重要なのは、理解ある役員を得ることです。あなたの目指す組織を理解し支えてもらうのです。

そこで注目したいのが取締役会が持っている2つの既存の役割とティール組織における2つの新しい役割です。

取締役会が持つ既存の役割の1つ目は、組織の監視と管理です。監視の義務は法律で定められてさえいます。頭に入れておくべきは監視が役割でもあり、法的義務でもあるので状況を把握したがるのは当然だという点です。役員が万事順調だと保証を欲しがるのは当然です。そこで問いが出てきます。どうすれば保証を得られる?どうすれば従来とは違う形で管理できる?役員が計画や予測や報告を求めるのは、仕事を増やすばかりで理念に合いません。ひとつ確かなのは、保証のために求めるレポートや指標や計画や予測からは管理した気分が得られるだけです。突然倒産してしまう大企業もたくさんありますし、エンロンのような不正も起きます。取締役会には文書や報告が渡されているのにです。それだけでは組織の現実が見えないのです。昔なら追加の数値や報告を要求します。それは管理した気分になるだけです。多くの報告や数値では現実が抽象化されます。だから組織の実態を探るにあたって、数値や報告だけを見てしまったら、現実に目がいかない。でも極論に走ってはいけません。サマリーや数値や指標ももちろん貴重です。しかしデータを現実と思い込むのは幻想です。なのでそれぞれの組織に合った形で、真の会話を持つことが大切になるでしょう。あなたや役員たちと組織の面々が話し合うのです。どういう環境にすれば取締役会が監視や管理をうまく実施し、組織が見逃している点に光を当てられるでしょう?どうすれば幻想でなく真の意味での監視や管理ができるでしょうか?私が役員たちに必要だと感じるのは、組織への献身性や積極的な関与です。その実現には役員にも時間が必要なので、従来のように事前に準備した資料をただ報告するのではなく、役員に組織の現実をじかに見せましょう。

その優れた方法のひとつは助言プロセスです。AESでデニス・バーキが採用した手法です。役員は各分野の専門家が起用されることが多いです。法律や財務やマーケットの専門家たちがいる。そこで試したいのは、かしこまった場でのみ意見を伺うのではなく、重要な意思決定に関する助言を求める場合、仲間だけでなく役員にも助言をもらうことです。役員が関与できる良い方法です。意思決定に関与して現場を肌で感じられる助言プロセスなので、役員は助言でき意見は尊重されますが、重役とはいえあくまでも助言です。それでも良い関与の方法です。方法は他にもあります。習慣を見直したり、指標の設定方法を見直すにあたり、役員たちと一緒に話し合い組織の存在目的を聞く会を作るなど結果の報告ではなく過程に巻き込むのです。考えるべき問いはこうです。監視や管理のニーズをどうすれば満たすことができるでしょう?

では2つ目。変革できる既存の役割の2つ目は、CEOを任命する役割です。とても重要な役割です。別動画でも話しますが、すっかり自分たちの組織を作り直して、見事に機能していたのに古いタイプのCEOを後継者にして、組織が昔に逆戻りする場合があります。では、どうすれば取締役会は組織に合った形で法的な監視の義務を果たせるでしょう?後継者となるCEOを“選ぶ”のではなく、つまり組織にCEOを押し付けるのではなく、プロセスを作ってCEOが“出てくる”ような過程を作るのです。“CEOの役割”という言い方はここで止めます。CEOの役割に関して別の動画で語りましたが、新しい組織においてCEOや社員には肩書きごとに決まった固定の役割がありません。流動的で細かな役割を持ちます。なので取締役会は辞めた人の役割を意識すべきです。前任のCEOの役割はなんだった?誰が埋め合わせられる?たとえば前任のCEOは、組織の存在目的の源だったかもしれない。別の動画で語った“ソース”です。または新しい組織のために場を整えていたかもしれない。昔とは違う形で運営しようと伝え続けていた。その他にも、組織の広告塔という役割もあります。どうすれば取締役会はこうした役割に適切な人物を補充することができるでしょうか?まずは役割の埋め合わせが権力争いとは無縁だと明確にしましょう。CEOの後釜を狙ってよく争いが起きるからです。そこでの取締役会の役割は重要です。空いたCEOの座を各自が争うのではなく、元CEOの役割を全員で埋めるのです。各自が一部を埋め合わせるポイントは、誰が自然と中心的な役割を担うかです。

自然と中心的な代役となっていくのは誰でしょう?それを確かめる方法のひとつが立候補抜きの投票です。ソシオクラシーで発展しホラクラシーで活用される方法です。基本的に立候補者は募らず、後継者の投票を組織全員に求めるのです。あるいは最適な後継者を判断できる関係者に投票してもらう。後継者にふさわしい人物の名前と理由を提出してもらうのです。回答を集めるとほとんどの場合、結果は明らかです。新たな“ソース”となる人の名前や組織の新しい広告塔となる人の名前や、場を整える人の名前が見えてきます。W・L・ゴアがテリー・ケリーをCEOに任命したときや、ケリーの後任となるCEO選びにも似たプロセスが使われました。取締役会は社員の大半に新CEOは誰がいいか尋ねました。私は“CEO”という肩書きの撤廃を勧めていますが、でもとにかく後継者の“任命”ではなく、“選出”をサポートしたのです。

では新しい2つの役割についても話しましょう。

新しい役割のひとつは、取締役会が場を作ることです。深い会話を交わす場です。組織のなかで一番広い役割を担っている人たちとの会話です。CEO的な役割を担っている人です。そういう人と深く語り合うのです。“何を考えてますか?何かを楽しみ、学んでますか?” “次に挑戦したいことは?” “自分と組織の存在目的により見合った仕事をするには?”こうした対話の場は全員に必要です。どれだけ努力しても自然に場は生まれません。年長の人たちには慣れないことですし、年少の人たちは尻込みするかもしれない。なので深い会話は簡単には生まれません。だからこそ取締役会の役割が重要になります。組織のリーダーたちが真に深い会話をして、点検や計画の機会となる場を作るのです。

もうひとつの新しい役割は、これまで以上に外の世界や外部の意見を組織に持ち込むことです。モンテッソーリ教育に携わる友人と話していて、取締役会について相談を受けたときに思ったんです。“取締役会のなかで外からの意見をくれる人はいるだろうか?” “疑問を投げかけて力を引き上げてくれる人は?” “別の教育者や神経科学者はいないだろうか” “監視よりも新しいアイデアを刺激する人がいてほしい”呼び名はどうあれ、取締役会に相当するところに学びへと導いてくれる人がいることも大切です。思考を刺激する人です。非暴力コミュニケーションやアプリシエイティブ・インクワイアリーやオットー・シャーマーの“U理論”に詳しくて、そうした知見を組織にいつも還元してくれる人や、組織のためにU理論の旅を用意してくれる人です。

これが役員たちの新しい役割のひとつです。取締役会と切り離したチームとして組織に刺激を与えるのも良いですが、取締役会の役割に組み込むことが重要です。そうやって取締役会が刺激を与えながら組織の監視や管理もおこなっていくのです。私の見解は以上ですが付け加えることがあればぜひ下のコメント欄に追加してください。

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