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1.Thoughts for top leaders

1-6 目的地をどう捉えるか(How do you hold the destination?)

次の問いもとても興味深いです。目指す先にある新しい組織のあり方をどのように捉えていますか?目的地をどう捉えていますか?2つの大きく異なる考え方があるでしょう。一般的なのは、ロケット科学のようにとても先進的なものと捉える考え方です。多くの人には到達するのが難しいものだという捉え方です。もう1つは、まったく違う捉え方です。目指す目的地は、現在のマネジメントよりもずっとシンプルなものだと捉える考え方です。自分たちはシンプルな場所に向かっていると考える。直感に反するように聞こえるかもしれません。組織のイノベーションの最前線がシンプルなはずはないと。

でも私は本当によりシンプルな方に向かっていると信じています。『ティール組織』で紹介した事例を考えるとわかりやすいです。特に2つの事例が思い浮かびます。

たとえばFAVIはCEOのゾブリストが変革を始めた数年後に、初めて深刻な危機に直面しました。湾岸戦争で自動車の売上が急減し、生産力が25%も過剰な状態に対処する必要がありました。普通なら25%の人員削減が必要だったのです。ゾブリストの対応はかなり素早いものでした。工場に出向き機械を止めて、みんなに隅に集まってもらい、自分は荷台に上がって人々に窮状を説明したのです。“人員の25%、つまり臨時雇用の全員を解雇しなければならない” “やりたくないが他の解決策を思いつかない” 人々の間にはもちろん恐れや混乱が生じましたが、そのうち誰かがこう提案しました。“今月の全員の賃金を25%カットしてはどうでしょう” “そうすれば誰も解雇しなくて済む” “来月様子を見て、必要ならまたカットすればいい”すぐに賛同の声が上がり、決を採るとほぼ全員が手を挙げてその場で意思決定がされました。賃金カットを全員が受け入れ1時間以内に作業が再開されたのです。これがいかにシンプルか考えてみてください。従来型の組織では、CEOは秘密裏に人事部長に相談し、人事部は25%の人員削減のための計画を練ります。弁護士に相談したり、コンサルタントを雇ったりして、秘密の役員会で協議したりすべて内密に事を運び、ある程度整ったらマネジャーたちに通告計画をつくらせる…。これが1時間で済んだのです。

次は、ビュートゾルフのデ・ブロックの助言プロセスの例です。彼が意思決定について、1万4000人規模の組織に向けて提案する方法は、自宅のソファーから夜10時に投稿するブログ記事です。“こんなことを考えているのでこんな提案をします”と。多くの場合、半分以上の看護師が24時間以内に投稿を読み、コメントを返します。翌日彼はまたソファーでこのコメントを読みます。ほとんどの人が賛成なら、“これで決定します”とブログに書きます。あるいは、“興味深い指摘があったので提案を修正しました”と知らせることもあります。時にはこんなこともあります。デ・ブロックが残業代の計算方法の変更を提案したときは、看護師たちから多くの反対がありました。“提案の意図は理解できますが、○○という理由でうまくいかないでしょう”。それに応えてデ・ブロックは、この問題について考える有志のグループを募りました。

これを従来型の組織ではどう進めるのか考えてみると、この方法がいかに強力でシンプルかに気づきます。もしデ・ブロックが従来型組織の代表で、残業代の計算方法を変えようとしたらどうするでしょう。まず、人事部長に相談します(実際には人事部長はいませんが)。“残業代計算方法の改正案をつくって役員会で提案してくれ”。人事部長は部下に改正案作成を依頼します。部下はここぞとばかりにはりきって、同僚と相談しながら案をつくります。人事部長に案を見せていくつか修正を指摘され、また同僚と相談しながらつくり直します。上がってきた修正案を人事部長が気に入れば、次の役員会で提案して協議します。意地悪な質問をする役員がいたりして、役員会の承認が得られないと、人事部長は部下に修正を依頼して同じことが繰り返されます。1ヶ月後の役員会で再提案してようやく承認されると、今度は社内連絡の部署が周知方法について修正を加えます。すると地域統括マネジャーを集めた全体会議で、新しい残業代計算方法が発表され、現場のマネジャーに情報が渡り、ようやく最後に看護師たちに伝えられます。このために2〜3ヶ月が費やされ、10〜20回の会議が開催されるでしょう。対してデ・ブロックはブログを書くだけで、24時間以内に反応を受け取ります。決定するときは その時点で全員の同意が得られています。一方、従来の方法では誰も看護師に相談していません。ですから提案内容に問題があっても、手遅れになるまでそれが表面化しません。半年〜1年後に不満が噴出して、やり直しになるかもしれません。

これは本当に衝撃的でした。自主経営の実践方法はすべて従来型の手法より、実にシンプルなのです。給与の払い方も、意思決定の方法も、対立への対処法もすべてシンプルです。ですから私は、こう考えるようになりました。我々の目的地はシンプルなものだと。

全体性についても同じことが言えます。仮面を外すことにためらいを感じるかもしれませんが、内心の奥深いところではリラックスして自分らしくいることは誰もが望んでいることであり、どうすればいいかも知っています。例えば最初はファシリテーターに依頼するなどして、いつも適切で安全な場をつくれるようになれば、人々は必ず自分を出すようになります。魔法ではありません。やり方は分かっています。環境さえ整えればすぐにでも、人々は仮面を外して自分を見せてくれます。

私はロバート・キーガンの表現が好きです。“ほとんどの組織ではみんなが無報酬で第2の仕事をしている。自分のイメージを守る仕事だ”。ですからその仕事を手放せるとものすごく解放感があるし、実際とても自然なことなんです。ここまで聞いておわかりでしょうが、私は目的地をよりシンプルだと考えるようになりました。

でもこれは私の考えにすぎません。ですから、この問いについて考えてみてください。“目的地をどう捉えますか?”私と同じような捉え方ができるでしょうか。それができればきっと今後の変革の旅に対して、気軽な気持ちになれます。肩の荷を降ろせるでしょう。

とはいえ目的地はシンプルでも、そこに至るには過去を手放し、学び直すことがたくさんあります。それは難しいかもしれません。区別が必要です。行き着く先にあるのは、今よりもシンプルですが、そこに至るための学び直しはとても大変なこともあるでしょう。次の動画では別の問いについて話します。“この旅をどう捉えますか?” でも今回の問いはこれです。“目的地をどう捉えますか?”

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