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1.Thoughts for top leaders

1-10 新しい世界観におけるリーダーの役割(Your roles in this new world)

多くのリーダーやCEOや経営陣が大きく頭を悩ませている問題があります。“新しい世界観におけるリーダーの役割とは?” 何度も話題にあがるテーマです。リーダーたちは皮膚感覚として、上から強権的に率いるのはもう違うと感じている。しかし一歩引いて見守るばかりでも、何かしっくりこないと思うことが多い。与えたいものはたくさんあるのに、一歩引いているのでそれを組織に伝える方法が分からない。ときには社員からこう言われます。“あなたがどこにもいないのは寂しいです” “リードしてください”。これは戸惑います。上から強く率いるべきか、そうでないのか。どちらかわからないのです。

じっくり語ろうと思うので、今回は全体で一番長い動画になるでしょう。

リーダーが試す価値があるのは、CEOや経営陣が組織のメンバーと同じ役割を担当することです。つまりこれまでとは違って、ひとつの固定的な肩書や決まった仕事ではなく、細かい役割を複数担ってみるのです。最たる例が書籍で紹介したビュートゾルフです。その看護師チームにマネジャーはいません。以前のマネジャーの役割はすべて細分化されました。“週末の作業計画をつくる” “祝日分の計画をつくる” “対立を仲裁する” “財務を担当する” “地元の病院を担当する” マネジャーのかつての仕事を全員で分担するのです。 同じようにCEOや経営陣の役割も細分化して分担すべきです。

私が考えるCEOの役割は、少なくとも8つあるのでそれらについて説明していきます。この動画を見終えたら8つの役割を振り返ってみましょう。足したり引いたりしながら、自分なりの役割を考えて、すべて役割が出揃ったらそれぞれを詳しく検討していってください。各役割の効果を増大させるには?どれを“前から”リードして、どれを“後ろから”リードするか?私が考えるリーダーの役割のうち、2つは従来から存在するものです。階層型組織にもありますが、それが少し形を変えて新しい組織に残っています。

ひとつはシンプルに“組織の顔”になることです。社外では“御社のCEOは誰?”と聞かれるからです。社外向けの代表者になるのです。それは今でも求められています。他の役割は分割して他人に渡せますが、少なくともこの役割に関しては、リーダーが継続して担うものになるでしょう。

変わらず継続していく2つ目の役割は、“感じ取る(センシング)”という役割です。組織に何が必要かを感じ取りビジョンを示すこと。ここで少し補足をしたいと思います。本を出版したあとにピーター・カーニックのアイデアに出会いました。彼は“ソース(Source)”という考え方を見事に発展させましたが、いままで著作物はなくワークショップをするのみです。そのため紹介できるような素材がないので、私が彼の考えをまとめてみます。

彼は何百人もの起業家と仕事をするうちに、どの組織も共通した傾向を持っていると気づきました。自然法則のようなものです。その法則とは、どんな組織にも“ソース”がいるのです。それは組織に1人存在している人で、特別な情報にアクセスできる独自のチャネルを持っており、その回路を介して組織に必要なものや必要な判断を知るのです。わかりやすい例を出しましょう。スタートアップや家族企業における“家長”です。その人はすべてを決断し、発言は常に重んじられる。そして家長が引退したとする。娘や息子が跡を継ぎます。するとなぜか、その娘や息子の発言が重んじられず、リーダーシップを発揮できない。しかし家長が組織のランチにやってくると、みんなが集まってくる。何をやるべきかを“ソース”に尋ねたいからです。アップルのスティーブ・ジョブズは典型例です。彼がいない数年は舵取りができず、彼が復帰すると存在目的や方向性が明確になりました。

ピーター・カーニグの主張によれば、“ソース”となる人にもある程度の努力が必要です。情報チャネルを介して話すときの自分をしっかり区別しましょう。そのときの発言は影響力があり、周りがついてきます。リーダーの発言だからではなく、説得力があり心に響くからです。プロジェクトを3案相談されたとして、情報チャネルを介せばどれにすべきか感じ取れ、周りも納得して従います。一方でエゴから発言すると、つまり情報チャネルを介さず独断で発言し、規模が倍になるからと企業の買収を進めたら、ひどい判断になる可能性があります。だから区別が大切です。情報チャネルを介した特別な洞察に基づく意見なのか、エゴからの発言なのかを分けるのです。カーニックが見ていたのは従来の階層型組織なので、ソースは1人だと主張しますが、どんなプロジェクトにも補助的な“サブソース”がいます。

私の考えでは自主経営の組織であっても、ビュートゾルフやモーニング・スターやFAVIであっても、ソースに直接アクセスできるのは1人だと思います。しかし自主経営の場合、サブソースになる扉が多くの人に開かれています。何が必要かを感じ取り誰もが舵を取っていけるのです。

しかしそうは言うものの、中心的な役割は1つであり特定の1人が直接のソースとなります。ビュートゾルフのデ・ブロックやFAVIのゾブリストがそうです。なのでソースを否定するのは愚かなことです。ソースは必要ないと言うのは間違いでしょう。組織にはソースが必要だと思います。それはCEOとは限らずマーケティング部の人かもしれない。大事なのは“誰がソースなのか”を知ることです。階層型組織ならそれが誰かは自然とわかるでしょう。あなたも他の人も嫌がるかもしれません。誰かの言い分が偉いなんて古い階級組織みたいだと。

ですがもう少し注意して考える必要があります。“1つの役割”に過ぎません。ソースという役割も昔と今で違います。以前の組織では、感じ取ったことや見えたビジョンを上から押しつけることができました。しかし新しい世界観では、感じ取ることも必要ですが、組織の行く先やビジョンを伝えるにあたり、押しつけずに“こう感じた”と共有し、それが周りに響いているかやサブソースが生まれるかを見るのです。ソースは1つの役割にすぎず、それ以上の決定権はないのです。面白いことに、情報チャネルを介して話すとたいてい周りは受け入れます。“何様のつもりだ”とは言われません。エゴから語ると反発されますが、ソースとしての提案やリーダーシップは歓迎されます。1つの役割に過ぎませんが、まだ違和感があるなら自分は“伝達器”だと考えましょう。自分に流れ込んでくる洞察に声を与える役割です。情報チャネルから得た洞察に声を与えるのです。“自分”ではなく“伝達器”なのです。その声はあなたの意志ではなく、組織の存在目的を代弁しています。

もうひとつソースに関して付け加えておきます。カーニック氏の提案が腑に落ちたのですが、ソースが引退などで組織を離れるとき、メンバーたちの前で儀式をするべきだというのです。そこで情報へのアクセス権を次の人に継承するのです。伝統的な家族経営なら父から子への継承ですが、誰であったとしても儀式をすることで、次なるソースでありニーズを聞ける人物だと示すのです。そんな風にして、それまでのソースが儀式としてメンバーの前で宣言するのです。“私はもう情報チャネルのプラグを外すから、君に渡して会社を去るよ。これからは君がその情報にアクセスする権利がある”それが2つ目の役割です。今でも必要な役割です。“感じ取り ビジョンを示す”しかし昔と違うのは、押しつけではなく差し出してそれに従うかは委ねるのです。

これから紹介する2つは、これまでに存在し業務の9割ほどを占めながら、完全に消える役割です。

1つ目は業務の内容に関する意思決定です。従来のリーダーは会議をぎっしり詰めていました。数週先まで埋まり、会議にやってくる人はいくつか案を持ってきてリーダーが意思決定する。こうしたタイプの決定は、自主経営に移行するとほぼ完全になくなります。実際に私も、変革の旅に出た多くのCEOからほぼなくなったと聞きました。周りが十分に力を発揮してくれるので、助言プロセスなどで決定していると言います。助言プロセスへの助言を求められることもあるでしょう。しかしCEOは助言だけなので時間はかかりません。周りの人があらゆる助言をまとめて、良い意思決定につなげるのです。リーダーには大きな時間の節約です。周りが自ら意思決定をするからです。

消えるであろうもうひとつの役割は、“組織にプレッシャーをかけること”です。階層型組織におけるCEOの役割のひとつは、プレッシャーをかけることです。“もっと早く、良く、安くしろ。もっと利益を出せ”。非営利組織でも締切や目標達成へのプレッシャーがある。資金調達のプレッシャーもある。組織にはプレッシャーをかける仕組みがあります。年間の予算を決めたり、毎月の予算を比較したり、個人目標やボーナスもそうです。その役割は自主経営に移行すると必要がなくなります。システム自体がプレッシャーの役割を果たし、リーダーが動く必要がなくなるのです。これについては自主経営に関する別の動画で、プレッシャーとして機能するシステムについてや、システムの自己修正について詳しく語ります。これも肩から下りる大きな荷物の1つです。自分1人で組織にプレッシャーをかけ続ける必要はありません。

ここからは新しく生じてきた4つの役割を紹介します。

1つ目は書籍でも紹介した“空間(スペース)の保持”です。新しい組織のマネジメント方法は、これまでの文化と違うものです。あなたも他のメンバーたちも、伝統的な階層型のシステムで学び育ってきました。社会的仮面をつけた予測と管理に基づく文化です。なので学習や学び直しが必要になります。しかも人はいつだって、昔から見知ったものに戻ろうとします。だから上手くいかなくなるとすぐに言うのです。“ルールが必要だ”とか、“階層型に戻そう”、“承認制にしよう”、“人を信じるのでなく規約を作るべきだ”などと言う。これはよく起きます。ビュートゾルフのデ・ブロックやFAVIのゾブリストのように、空間を保持するのがリーダーの役割です。“待って。昔に戻るのはやめよう”と指摘するのです。なぜ取り組んでいるか深い前提を思い出させて、昔のやり方に戻りたくない理由を伝えるのです。新しい組織の空間を保持することは、決定的に重要な役割です。初めのうち、これはリーダーの仕事です。やがて願わくば、新しい世界観になじむ人が増えれば、その人たちがこう指摘してくれるでしょう。“それはうちのやり方じゃない”でも初めはリーダーが自覚的に取り組む役割です。

2つ目の役割は、3つの突破口の“ロールモデルになること”です。あなたの組織が取り組むと決めた、自主経営・全体性・存在目的の3つのうち、いずれかにおいて模範となる必要があります。本でも紹介していますが、ここではぜひとも紙に書いたり話し合ったりして考えてみてください。ロールモデルになるとはどういう意味でしょう?日常の場面でどう振る舞えばいい?何をやめて何を始めたいでしょうか?ひとつ強調したいのは、100パーセント完璧にはできないという点です。学び直すことがたくさんあるので、つい昔のやり方に戻ったりします。うっかり間違いを犯す可能性があるのです。でも大丈夫です。そのときにとても大切な模範を示しましょう。こう言うのです。“すみません 間違えました”“私たちが目指すのはあちら側です”“こうすべきでした”ここで模範的に示しているのは謙虚さや偽りのなさ、失敗する権利や間違いを修正することです。しかも自分の目指す方向をより明確に伝えている。だから何も恐れる必要はありません。このように失敗も、素晴らしい機会に変わるのです。これが新しい役割の2つ目です。突破口の模範となりましょう。

リーダーの新しい役割の3つ目は、“メンバーを招き続ける”その姿勢を崩さないことです。従来のCEOの役割では、問題が起きると自分のところに問題を報告させ、自分で対処を考える。自分で判断するか、自分と近い人間に問題の対処を任せながら、解決していくのです。この点が根本的に変わります。問題を引き受けて対処するという形が真逆になります。つまりビジョンを伝えて、各自で解決してもらうのです。これに関する動画もあります。周りを招く姿勢は大切で、いつでも発揮できます。“そろそろ予算を考えなきゃいけない” “予算について別のやり方を考えたい人はいる?” “年次評価の時期だ。別のやり方を考えたい人は?” “これまでとは違う戦略立案に関してアイデアを話し合いたい人は?” この旅にのぞむCEOは、こうした招待状を送る機会が常にあります。

4つ目の新しい役割はあまり長く語らないでおきます。これをテーマにした動画を別に作っているからです。自主経営の章にあります。そこで話しますが、新しい組織のリーダーに業務内容に関する決定権はなく、新しい役割として担うのが“環境を整えること”です。その中で周りが意思決定をするのです。だんだん慣れていきますが、初めのうちはリーダーが伝える必要があります。意思決定を求められる度に言うのです。 “自分はもう判断しない” “でもじっくり考えて、あなたが意思決定しやすくなる環境をつくります”どんな会議で、どんな枠組みで、どんな人を集めれば問題が自然に解決していくでしょうか。階層のトップが、報告された問題に意思決定して下に伝えるのではなく、問題が起きている関係者たちのなかで、自然と解決できるように促すのです。これについての動画があるのでぜひご覧ください。

これまで “CEOの仕事”と1つにまとめるのではなく、8つの細かい役割を紹介してきました。私もよくCEOという言葉を使ってしまいますが、それは区別しやすいからです。まだCEOに特有の仕事もあるのです。組織の顔になったり、感じ取ったり、方向性を決めたり、空間を保持したり。ですがCEOを特別視した語り方は避けましょう。

新しい世界観のロールモデルとなる方法のひとつはどの役割からの発言かを明確にすることです。こう言うと周りは助かります。“空間の保持という役割から言えば助言プロセスの活用をお勧めします” あるいは “私が担う役割は意思決定の環境づくりなのでこれを提案します” ぜひともこのように他のメンバーと同じく、役割に明確な形を与えて口に出しましょう。今はどの役割でいるかを口にするのです。そうすると周りは昔の強いCEOのイメージを捨て、意図を理解してくれるでしょう。もうひとつのポイントは、こうした細かい役割ならある部分では積極的に介入して、必要なことを伝える一方で、他は周りに任せられる点です。よりきめ細かいのです。

単に上からのリードを止めて、周りの人のために後ろから見守るばかりでは多くのリーダーが行き詰まります。あなたはどうか分かりませんが、これを聞いて多くのリーダーがすごく安心するようです。CEOたちは感じ取ったことを伝えたいものなので、これを知れて嬉しいと言います。“エゴからでなくソースとして発言すれば、うまく伝えられるだけでなく周りも歓迎するんですね” または “積極的に空間の保持に努めると喜ばれるんですね”逆に “業務関連の決定は周りに任せられそうだ” とも言います。多くのCEOがそれに前向きです。いつもじゃなくても任せることには賛成なのです。

ぜひチェックしてみてください。自分の役割はどうでしょう?明確になったでしょうか?どの役割を積極的に果たし、どれを手放せるでしょう。最後のポイントです。これらの結果、リーダーの仕事は当然減っていきます。変革の旅に取り組むリーダーから何度も聞くのが、ものすごく時間ができるという点です。それは意思決定という役割が、会議などで多くの時間を食うものだったからです。その時間が自由になります。

本でも紹介しましたが、私が気づきを得たのはサン・ハイドローリックスのCEOと話したときでした。ナスダック上場企業です。1週間の予定を見せてもらうと、ミーティングが4つで、うち2つは私とでした。多くの時間を創造的な仕事や好きなことに使っていたのです。それから似た話をたくさん聞きました。休暇を多く取れるようになったとか、自分がいなくても大丈夫とか。一番極端だったのはカナダの女性で、組織に顔を出すのは月に1回だと言います。周りに任せているのです。

面白い問いを使って点検してみてください。“まだ仕事量に圧倒されているか?” “まだ作業が多くて全部の会議に出ているか?” もしそうなのであれば、変革はこれからです。手放せるものを手放せば自由な時間が増えるので、より効果的に新しい役割に集中することができます。感じ取りビジョンを示すという既存の役割にも注力できます。

こうしたリーダーがいる組織の素晴らしい点は、リーダーが身を引くと同時に環境を整え、空間を保持し、ロールモデルになることによって、真空状態が生まれます。そこに力を発揮するべく人が集まり、以前はできなかったことをする。自分でも想像できなかったようなことをです。メンバーが強みを発見する空間になっているのです。自分にとって未知なる強みが見つかる。この旅の素晴らしい点のひとつです。

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