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2.Perspectives on the journey

2-2 4つの象限:好みと盲点(Four quadrants – preferences and blind spots)

誰にでも好みと盲点があります。変革への取り組みにも同じことが言えます。変革を始めたり何か問題に直面したとき、かなりの確率で自分の偏った好みに基づいて取り組み方を決めています。それ以外の方法は意識にすら上らず盲点となっています。それが今回のテーマです。

説明のためにある理論を参考にしましょう。アメリカの思想家ケン・ウィルバーの理論です。内容はこうです。人が直面するどんな出来事も、どんな問題も4つの面があり4つの象限で表現することができる。まずは物事を外側から眺める視点です。目に見え形に表せる要素がこの右半分に該当します。左半分は物事の内側を眺める視点です。ある物事に対して生じる、感情や思考のような目に見えず形に表せない要素が左半分に該当します。上半分は物事を他から切り離し単独で眺める視点。下半分はより広い文脈から眺める視点です。上半分が個別的な視点、下半分が集合的な視点となります。それらを重ね合わせてウィルバーは“四象限モデル”と言っています。

みなさんの向きに合わせて説明してみましょう。個別の物事を外側から客観的に眺めたとします。たとえば組織においては個人の“行動”を眺めることに相当します。同じく個人を眺める場合でも内側の話なら“マインドセットや信念”に目を向ける。内側を集合的なレベルで眺めるなら集団の信念やマインドセットである“組織文化”を見る。そして最後は、集合的な物事を外側から眺める場合です。目に見え形に表せるハード面を見る場合です。組織なら“システム”や“プロセス”を眺めることに相当します。ウィルバーによればこのモデルを組織に当てはめると、どんな問題やチャンスも点検することができます。“マインドセットや信念”という観点から組織を眺めたり、“行動”や“組織文化”から眺めたり、慣行やプロセスといった”システム”から眺められる。これはものすごく役に立つ見方です。なぜなら私たちの多くが偏った“好み”を持っており、四象限のうち1つか2つを自然と重視してしまうからです。そのうえ盲点に入って意識に上らない象限もあります。

このモデルの価値は盲点があることを自覚し物事に対する視点を増やせる点です。その価値は考えてみると分かります。コンサルタントやコーチはひとつの象限だけを見るように言ってくるかもしれません。大事なのは文化だから文化を変革すべきと言う人や、目に見える要素が大切だと言う人もいる。だから報酬制度や会議の慣行を変えるべきと言うのです。コーチングを導入して新しい概念を理解させろと言う人もいます。しかし実際は4つの象限のすべてが大切です。すべての物事にこの4つの要素があります。だから4つとも変革の入口になりえます。

いろんな事例があります。書籍のなかでも取りあげた話ですが、左上の象限に該当する“信念”を持ったCEOがいました。金銭こそ優れたパフォーマンスを引き出すという信念です。金こそがパフォーマンスを生む。そのCEOはそういう信念をシステムに落とし込もうとします。つまり組織の人間に対して、自社株購入権やボーナスを与えて優れたパフォーマンスには高い賞与を出すことにする。そうすると人々の“行動”にも影響が出ます。その組織の人々は競い合うようになるでしょう。結果を求めて周りを押しのけたり、ややこしい社内政治が生じたりする。今の話は私の偏見であり成果主義が合う人もいるでしょう。そして“文化”の象限でいえば競争が重視されていきます。協力ではなく競争の激しい文化になるでしょう。

4つは繋がっているのです。CEOが変わり“信念”が変わっても他の3つは昔のままです。そこが変わるには時間が必要かもしれない。4つの象限が等しく重要です。そこで質問です。自分の“好み”は何でしょう?自然に関心が向くのは、4つのうちどの象限ですか?それから盲点になっている象限は?意識的であれ無意識であれ、重要ではないと切り捨てている象限は?動画を止めてじっくり考えてみてください。自分の好みと盲点はどこでしょう?

おかえりなさい。いかがでしたか?好みと盲点が見つかりましたか?

ちょっとしたエクササイズをしましょう。自主経営への変革時にありがちな状況を考えてみます。組織の変革に取り組んでいるとします。自主経営を導入し、多くのチームがそれに従って動き始めている。そこで問題が起きます。メンバーたちが相手に優しすぎるのです。自主経営が機能するためには、本音のフィードバックが必要です。期待を下回っていたり勤勉でない人がいるのに、優しすぎて相手に指摘することができない。どうしますか?また動画を止めてください。あなたはどんな介入を好みますか?この状況にどう対処しますか?

戻って来ましたね?では考えてみましょう。

みなさんの答えは分かりませんが、あなたの手段は四象限のどれに当てはまりますか?今回の例ではほとんどの人が、上2つのどちらかに飛びつくようです。フィードバックを促すべく個人を育成しようとします。NVCトレーニングを受けさせたりするわけです。そういう考えが上2つで、“行動”についての育成なら右上、もう少し内面的な育成なら左上。内面的とはフィードバックをためらう恐怖心であったり、人間関係を壊したくないといった“マインドセットや信念”のことです。これが上2つの象限に該当する介入です。その他には、“文化”を変えるべくトップが模範を示す手もある。たとえば自分や経営陣が見本を示すという手段です。優しく建設的な真のフィードバック法を示すのです。これは左下の“組織文化”に該当します。組織文化を築く方法は他にもあります。また別の方法を示しましょう。これは私の好みでもあります。私なら優しすぎる組織のCEOにこう言います。“みなさん優しすぎるようですね。この原因はおそらくメンバーがチームの結果に責任感を持ってないからです”

“システムの機能不全に気づいていながら経営陣か誰かが修正するだろうと任せているのです。相手に優しくいられるのは結果への責任感がないからです。私が好んで見るのは「システム」です。そこにも真実はあるはずです。いまだに従来のマネージャーのような人や上層部が介入していませんか?ビュートゾルフのようにシステムを変革することも可能です。チーム間の成績を比較することでメンバーに仕事への誇りを持たせるのです。そうすれば成績が悪いとき誰かが声をあげる。結果への責任感から厳しい内容でも指摘するのです”これが私の基本的な好みです。

私が注目しがちなのは“マインドセットや信念”と“システム”の象限です。そして“組織文化”の象限は私にとっての盲点になりがちです。もちろん重要だと分かっていますが、企業が実践するカルチャー変革に苦い思い出があるんです。経営陣が手本を示さなかったり、大騒ぎした割に何も変わらず形だけの取り組みだったりして少し嫌いになってしまったんです。カルチャー変革が嫌いになり目を向けなくなっていきました。でもそれを自覚しているので、4つすべてを見て適切な入口を探すようにしてます。

そこで最後の問いです。好みと盲点を見つけたあとはどうすればいいでしょう?

まず気づくことが大切ですが、その他に大切なのは、組織内の他のリーダーたちと比較し合うことです。変革の力になってくれる人たちと意見交換をしましょう。人が違えば好みも盲点も違う可能性が高いからです。たとえば私なら“組織文化”を強く信じている人を見つけねばなりません。自分を補ってもらうのです。一緒に適切な介入法を考えれば四象限すべてに対応できます。

もうひとつお勧めがあります。もしあなたの組織に、変革の旅を手伝うコーチやファシリテーターがいたらその人の好みや盲点を確認してみましょう。誰にでもあるんです。コーチやコンサルタントの多くは一面に力を入れ、別の面は見ない。四象限に等しく関心を向ける人はきわめて珍しいのです。だからこそオープンに対話をすることで、足りない視点を持った人を意識的に補えます。そうすれば“マインドセット”ばかり指導されることもないし“行動”や“システム”を忘れることもない。逆に“システム”に特化して内面を忘れることもない。

ひとつ例を紹介しましょう。ホラクラシーの考案者ブライアン・ロバートソンの好みも偏っていて関心は“システムや構造”だけで変革への取り組みも内面を無視したものでした。元からいたマネージャーたちはすごく大変だったでしょう。昇格することを第一として生きてきたのに、突然それを否定される。なので“行動”や“システム”の変革だけでなく、内面に目を向けた深い対話も必要です。いまは違うでしょうが、最初の時点ではそこがホラクラシーの盲点でした。組織の人々の内面的な部分をよく見ていなかったのです。

なので会話を持つことをお勧めします。コーチやファシリテーターやコンサルタントとです。そうすれば4つの象限を平等に見られます。それにより最適な介入が可能になるうえ、組織で取り組んでいる変革がずいぶん快適で楽しめるものになります。一部分にしか目を向けず問題を生むのは避けましょう。

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