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4-1.(mis)understanding self-management

4-1-22 変革の2種類の痛み(Two types of pain along the journey)

痛みについて語りましょう。もちろん私たちが願っているのは、自主経営への移行が楽で穏やかな航海であることです。自主経営に移行した姿を想像してみると誰もが力を得られるので嫌がる理由がありません・みんな喜ぶはずと考えるでしょう。

しかしある日、友人のクリストフ・ル・ビアンが教えてくれました。彼は昔とは意見が変わり、痛みなき移行はなく痛みは必ず伴うと言うのです。多くの組織を見てきた経験から私も同意します。

そして痛みには2種類あります。彼が指摘したタイプの痛みは“成長痛”だと言えます。
その痛みは一時的な痛みであり、自主経営に向けて成長を迫られ、より大きく力強い自分に成長する際の痛みです。その移行は痛みを伴う大変なものです。

例を出しましょう。よく聞くケースは社員たちに被害者意識が根付いてしまっていることです。驚くことではありません。多くの組織が特に階層が下の社員たちをとてもひどく扱っています。
そのため社員たちは率先して動くのは損だと考え、責任を負うのも危険であり言われた通りに動く方が安全だと考え、嫌なことは周りのせいにします。

こうした姿勢は職場だけでなく、12年ほどの痛ましい学校経験から生まれたものでもあります。そのためとても奥深いプロセスになります。身についた被害者意識を捨てて自分の力を発揮するのは大変です。
もちろん最後には、自分の力を発揮する喜びを分かち合えますが、その変化はとても深いのに軽視されがちなのです。特に幸運にも周りより権限を持った人間たちは自分の力を示すことに慣れているからです。

他に痛みを感じるタイプはマネジャーとしての自分を誇っている人です。その人たちは昇進することに大きな意義を感じます。努力の末昇進したのです。家族で一番の出世だったかもしれません。その価値観が急に変更を迫られます。地位や肩書きが関係なくなるので初めはかなり苦労するのです。

また別の人たちにとっては、この自主経営という世界観自体が信じがたくて戸惑います。
“え? 職場に明確な階層がなくなるというのは家族でたとえると?”
“家族には性別や大人と子供で役割の違いや階層がある”
階層がないなら、“夫や父としての私の役割は?”
そんな風に混乱する人も出てくるでしょう。こうした成長痛を軽視しないことが大切です。全員ではありませんがかなり苦しむ人もいます。

そのためリーダーの役割は、成長痛を乗り切るための環境をつくることです。なるべく最善な痛みのない環境を早急につくるのです。

そのための1つの方法は対話することです。
痛みを口にし言葉にして理解してもらうのです。
コーチングを使うのもいいでしょう。ある組織は全員がコーチを利用できるようにしていました。大きな痛みを抱えた人は自発的にコーチを求めない場合があるので、そんな人でも助けを得られる工夫は必要になります。

個別のコーチングの次に効果的な方法は、痛みについてグループで語ることです。組織やチームの元ミドルマネジャー全員を集めて対話するのです。そして痛みやその先にある希望を語ってもらう話を聞くと多くのマネジャーの心が軽くなるのです。
“自分だけじゃないんだ。他の人も苦しんでいるんだ。でも痛みを乗り越えて新しい状態を楽しむ人もいて中間管理職を脱する利点を実感しているようだ”

グループでの対話はとても効果的であるうえ、全体性を醸成する素晴らしい機会です。抽象的な概念としてでなく体験として実感できます。
深い対話をし弱い部分をさらし仮面を脱ぐのが有益だとわかります。今まで考えていなかったとしたらぜひお勧めします。成長痛を感じている人を助ける方法を考えてみましょう。

また別の種類の痛みもあります。良い用語が見つかりませんが、“避けられる痛み”です。
意味は単純で、もう少しうまく管理していれば避けられたであろう痛みのことです。完璧な移行など存在しないので、ある意味痛みは避けられません。

必ず自主経営への移行においては、避けられない形で誰かに痛みを生んでしまいます。これまでの動画を見た方ならわかるでしょうが問題は“完璧な移行を計画できるか”ではありません。“いかに早く自己修正できるか”が問題です。避けられない痛みが生じたらすぐに自己修正するのです。

痛みの例を出しましょう。最も自明でよくある痛みは“明確さの欠如”です。
これまでの動画で語ってきたように、明確だった慣習的ルールまで移行時に誤って撤廃してしまい、構造や意思決定の仕組みまで失い、新しいルールが明確になるまで時間がかかる場合があります。それが多くの人に大きな痛みを生むのです。
“困ったな、どうやって進めていこう”
“誰がどんな基準で意思決定をする?”
そのため少しでも早くルールを明確にすることは、避けられない痛みを避ける良い手段となります。

他には移行のペースが速すぎるという痛みもあります。遅すぎる場合も同様です。
移行が速すぎるとは、何らかの施策を急に明日からやれと言うような場合です。慣れる時間がなくて痛みが生じます。
一方で移行が遅すぎる組織もあります。1箇所で試験運用中でじき全て移行すると全員知っている。消えるとわかっている古い仕組みや職種を続けるのは…。期限がある方が楽な時もあります。
“試験運用は終わったから半年以内に移行する”
多少混乱はしますが期限があれば当面の目標になります。このように私たちが経験する痛みの多くは回避可能です。少しの修正を加えれば回避できます。

大事な点としてぜひ実践してほしいのは、自主経営への移行において痛みの存在を察知したら、対話をして見極めましょう。

それは避けられない成長痛?
それとも避けられる痛み?
避けられない成長痛なら、どうすれば対話のための環境や場をつくり、痛みが語られ認められ修正されるでしょう?できる限りスムーズな移行を支えるのです。

痛みを抱えた人は常にいると意識しましょう。
避けられる痛みの場合は、移行の何かが本来よりうまくいっていないので、システムが自己修正できるようにしましょう。

奥にある中心的なメッセージはこうです。
“痛みを歓迎し痛みを調査し対策を考えること”
とても多くの人が痛みを不快に感じるあまり、痛みを見ないふりをしています。そうやって存在を無視し痛みが悪化します。そのためリーダーへの最も深く重要な問いはこうです。

組織の痛みをどれだけ嫌がらず直視できるでしょう?
痛みを認め察知し歓迎できますか?そのために対話をできますか?

できなければそれはあなたの成長ポイントです。ぜひとも周りの力を借りて、組織の人や外部のコーチに頼んで、対話が苦手な自分を補ってもらいましょう。

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