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4-2.Self-management: getting started
4-2-1 どこまでを目指す?(How far will you go?)
旅の前に自分の中でも周りにも目標を明確にしましょう。どこまでの変革を目指しますか?
というのも“自主経営”や“ティール”という言葉を一旦口に出したら、後戻りはできません。あなたが話し始めた途端、混乱する人が出てくるはずです。マネジャーたちは自分が用なしになるのかとあなたを質問攻めにするかもしれません。それに備えて答えを用意しましょう。私は無駄に苦しむ組織をたくさん見てきました。“自主経営”という言葉が独り歩きして誤解を生んでしまったのです。それを正すのには長い時間がかかります。
ではあなたは何を目指す?かなりシンプルに言えば、目標は大きく3つに分かれると思います。
もしかしたらあなたが実現したいのは、自主経営ではなく権限委譲なのかもしれません。意思決定は下に任せていきたいけれど、階層制は残したいという場合があります。なくすと運営方法が分からず困惑したり、オーナーや経営委員会の増長を恐れるからです。しかしたとえ階層を残したとしても権限移譲を行う利点はあります。発達指向型組織に関するロバート・キーガンの本によれば、多くの組織が形式上階層制を保持しつつ成果を出しています。社員の成長が真の目標なら発達指向型組織は1つの手です。サーバント・リーダーシップを取り入れたければ参考となる組織が数多くあります。バリー・ウェーミラー社のボブ・チャップマンは階層型組織の中でそれを実現しています。これも手段の1つです。
もう1つの可能性は部分的に階層を残すことです。実際に多くの会社が自主経営のチームに現場を任せています。たとえば工場運営を自主経営チームに任せるのです。チームリーダーは置かないこともあります。ただしその組織のトップは階層制のままです。アマゾンに買収されたホールフーズがまさにそういう組織でした。部門別の自主経営チームが店舗を回していました。レジチーム、生鮮食品チーム、精肉チームなどが店舗ごとにあるのです。でも店舗以外は従来のピラミッド構造でした。
あるいは完全に自主経営に移行することも可能です。権力の序列をなくすのです。組織の規模によっては長い時間が必要です。大きな組織なら数年かかることもあります。
こうして自分の目標を明確にするのも重要ですが、メンバーに未来の姿を示すことこそ、リーダーの義務です。彼らが将来を思い描けるようにしましょう。もちろん目標を超えることもあります。権限移譲から自主経営チームとなり、やがて全体が自主経営になるかもしれません。でもまず考えるべきはどこまでを目指すかやどこまでなら経営委員会や株主がついてくるかです。必要ならこの動画を一時停止して考えてみてください。自分はどこまで目指し、それを周りにどう語る?
次に感覚的な面からも掘り下げてみましょう。自主経営を実践すると何が快適になるでしょう?逆にどんな分野・話題・意思決定が自主経営において不快に感じるでしょう?これをリスト化すると面白いでしょう。言語化してみるのです。“助言プロセスは信頼できるから自主経営には前向きだ。つまらない階層制を取り払いたい。だけどリーダーの拒否権はまだ失いたくない。4〜5つの事柄に関しては残したい。価格設定に関する拒否権、新製品に関する拒否権、経営陣との交渉に関する拒否権。あとは…主要取引先に関する変更事項への拒否権”。きわめて真っ当な意見です。
ぜひ自分の考えは社員に対しても明確にしましょう。“私はぜひ権限移譲を実現したいと思っている。ただし一部の権限は当面据え置く。私だけでなく皆が快適でいられるよう、今はトップダウンの統制形態を残すのがいいと思う”。ここで再度動画を止めても構いません。リストにするのです。
自主経営を通して実現したいのは何でしょう?どんな拒否権を持っておきたいでしょう?
“拒否権”とは少し専門的に言えば、“合意による意思決定”に等しいものです。ご存じの方もいるでしょう。つまり助言プロセスに基づいて、必ず合意を得てから意思決定するのです。その合意形成に自分も含まれます。これも別種の拒否権と言えます。こうした目標の探求には経営委員会を巻き込むといいでしょう。自主経営に抵抗する人もいるはずです。白黒つけるのではなく、つまり経営委員会に自主経営の賛否を問うではなく、枠組みを変えるのです。“経営委員会としてどの点において時期尚早あるいは不安を覚えるか。またはどの領域がリーダーである自分や経営委員会が仕切るべきか”。リスト化してください。すると彼らの恐れも払拭でき、他のことも進めやすくなるでしょう。
ぜひどこまで目指すかを明確にしてください。一旦口にすれば後には引けず、質問攻めに遭います。明確なほど余計な苦労をせずに済みます。要らぬ誤解を招いたり訂正に奔走することもなくなるのです。初めから明確にしておきましょう。
4-2.Self-management: getting started
4-2.自主経営をはじめましょう
- 4-2-1 どこまでを目指す?(How far will you go?)
- 4-2-2 “自主経営”という言葉を使う?(Use the term “self-management”?)
- 4-2-3 仕事が減る不安に対処する(Addressing the fear that there will be less work)
- 4-2-4 心理的オーナーシップがどの程度あるか?(What’s the level of psychological ownership?)
- 4-2-5 旅の前に目的とビジョンを明確にすべき?(Clarify the purpose and vision before you start?)
- 4-2-6 階層のどこから始めるか(At what level of the pyramid do we start?)
- 4-2-7 よくある落とし穴“とにかくやれ”(A common pitfall: “Just do it”!”)
- 4-2-8 自主経営チームを立ち上げる(Launching self-managing teams)
- 4-2-9 階層型組織における自主経営チーム(Self-managing teams within a hierarchical organization)
- 4-2-10 経営チームはどうなる?(What to do with the executive committee?)
- 4-2-11 サポート機能はどうなる?(What to do with support functions?)
- 4-2-12 新しい慣行の公式化(Formalizing new practices)
- 4-2-13 組織構造を可視化する(Making the new structure visible)
- 4-2-14 移行の儀式(Rituals for the transition)
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