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2.Perspectives on the journey

2-1 変革に対する新しい考え方(A new way to think about change)

今回はお待ちかねの内容です。組織をつくり直すための7つのステップを解説します。いえ、冗談です。もちろん 組織をつくり直す“7つのステップ”などありません。ですが、私もよく質問されますし次のような会話も耳にします。“変革へのステップを短くまとめられれば、組織ももっと簡単に取り組めるのでは?”でもそう簡単にはいきません。

ジャン・フランソワ・ゾブリストのことをよく例に出します。FAVIの元CEOです。彼はよく講演をして質問を受けるんです。“どうやってFAVIのような変革を起こすんですか?” “どうすれば真似できますか?” 彼らが聞きたがるのは“変革のためのステップ”です。ゾブリストの答えはシンプルで、こう答えるのです。“DEMERDEZ-VOUS!”行儀のいいフランス語ではないですが、“自分で考えろ”といった意味です。“自分で見つけろ”と。私も大賛成です。変革は計画できるものじゃない。ここで彼が示しているのは、その変革が自分にとって重要なら方法は自分で見つけられるということ。このアドバイスには多くの知恵が詰まっています。もちろん“自分で考えろ”と言って終わりにすることもできます。

ですが、この動画シリーズではこう考えています。“変革へのステップ”はないけれども、他者の成功と失敗を学んで活かすことはできる。そうやって次第に知見を蓄積していくのです。変化を起こすための知見です。でもステップごとのガイドではない。

ではなぜ人はステップごとのガイドを求めてしまうのか?それは次のような理由でしょう。私たちは“変革の起こり方”について時代遅れの考えを持っています。いまだに組織を機械に見立てて認識しているのです。何でも計画可能であり入念に計画すべきという考えです。計画をつくりさえすれば、簡単に実行できると思っている。計画した通りのステップに基づいてです。しかし、それはもはや不可能です。これまでも不可能だったんですけどね。この動画の準備中に気づきました。『ティール組織』のイラスト版に似た内容について書いたのですが、改めて読むと良い内容なのでこれを動画にしようと思ったんです。つまり読み上げようと思います。その方が自由に話すより良いでしょうから。この動画シリーズでお伝えするのは、出版後の新たな知見ではありますがすべてがそうではありません。この内容は根本にかかわるので動画に入れたかったのです。

変革の旅に乗り出す前に疑ってみてください。“変革の起こり方”に対する昔ながらの認識を疑うのです。そうしないと間違った方法で取り組んでしまうかもしれません。では読みながら要約していきましょう。“変革”への認識をアップデートすべきです。旅の前に組織変革に対する認識を点検しましょう。オレンジ(達成型)の思考で組織を機械だと考えていませんか?その世界観を更新するのです。少し補足しましょう。入り組んだ(complicated)世界と複雑な(complex)世界は違います。FAVIは見事な比喩を使って違いを説明しています。ボーイングなどの航空機は“入り組んだ”システムです。数百万の部品が1つのロジックで連携しているので、ランダムに部品を1つ抜いた場合、優れたエンジニアならどこにどう欠陥が生じるか正確に分かるのです。他方、ボウル一杯のスパゲティは“複雑な”システムです。数十のパーツはあるでしょうが航空機に比べるとはるかに少ない。でもボウルからはみ出た1本のスパゲティの先を引っ張ると、何が起きるかは世界最高のPCでも予測不可能です。変革に対する一般的な考えには暗黙の前提があります。組織は航空機のように“入り組んだもの”という前提です。この前提だとうまく分析さえすれば2〜5年で計画的に変革できると考えてしまう。計画さえ済めば簡単に実行できるというわけです。しかし実際の組織はボウル一杯のスパゲティのように“複雑な”システムです。だから多くの試みが失敗するのです。

では複雑なシステムを変革するには?踏み出したい1歩目のことを入念に考えるのです。2歩目まで考えてもいいでしょう。でもそこまでです。あとは耳を傾けて状況を感じ取りつつ反応する。たとえばスパゲティの絡まりをほどきたいと思ったら、あらゆる角度から眺めてみます。引っ張るのに最適な1本を見つけたら慎重に引っ張ります。うまくいけば引っ張り続け、無理そうなら手を止め、もう一度眺めて別の場所から試す。組織とは非常に“複雑な”ものです。どれほど賢くても1つの大きな変化が何をもたらすかさえ予測できません。新しいチャンスが生じるかもしれないし、システムがバランスを崩して悲鳴を上げるかもしれない。だから現時点で良いと思われる1つか2つの変革から始めましょう。

あとは次にどんな変化が必要か組織に耳を傾けるのです。そのためリーダーには新しいスタンスが必要です。それは変革の旅への決意と強い献身です。そして正直に表明するのです。“事前の包括的な計画は気休めにはなるが幻想だ。そして変革には痛みも伴う。しばらくはバランスが崩れ混乱するだろう。その先に大きな変革がある。次なる大きな変革まではまた混乱が生じるだろう” この考えが気に入らず批判してくる人もいるでしょう。その人たちは昔の考えを引きずり痛みを避けたがります。“痛みの回避など不可能だ”と言っても耳を貸しません。

でもリーダーが過剰になるのも禁物です。“痛みは変革の一部だ”と論破する必要はないのです。ここは力の見せどころです。正当な意見にはオープンに向き合い、見当違いの批判は気にしないでおきましょう。そんな批判をする人は完璧な計画をつくれると信じ、変革に痛みや混乱はないと考えているのです。この認識はとても重要です。すべてを計画できると考えないこと。上から押しつけて実現するとも思わないでください。

最善の方法は、組織というスパゲティをじっくり眺めて、どこから始めるべきかを考えることです。どこから始めるべきかについて参考になる動画もアップします。まずは1歩踏み出した反応を見て2歩3歩と進んでいきましょう。事前にすべて計画可能と考えるより変革の旅が簡単になるはずです。

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