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2.Perspectives on the journey

2-8 変革の旅に名前は必要か?(Should you give the journey a name?)

最重要とは言えませんが、ある疑問が浮かぶかもしれません。“この変革の旅にどんな名前をつけようか?” という疑問です。目的地に名前をつける?理想の姿に名前をつけるべき?悩む人もいるでしょうが私の考えはこうです。私が話した多くのCEOの助言は明快でした。“名前はつけるな”。変革プログラムにも目的地にもです。人に伝えやすくなるので名前はつけたくなります。たとえば“ティール組織”を目指すとか、“自主経営”や“アジャイル型”の組織になりたいと語る。大企業では目的地に向かう道のりにも名前をつけがちです。プロジェクト・アポロとかプロジェクト2025などです。

私からの強い忠告です。“名前はつけるな”。可能ならぜひ避けましょう。理由は2つあります。

1つ目は、名前をつけない方が進めやすいからです。批判の的を作らずに済むのです。ロラン・ルドゥ氏から話を聞きました。ベルギーの運輸省で変革の舵をとった人物です。大きな改革だったので同僚からは名前をつけて周知しようと言われたそうです。しかし彼は“象”を作りたくないと言って拒否しました。“象”とは批判の的のことです。同様の例は多くあります。“ティール組織になるんだ”なんて言うと、人によって異なる感想が生まれます。歓迎する人もいれば反対する人もいて収拾がつかなくなります。“アジャイル型組織を目指す”と言ったら、それに適さない部門もあるといった意見が出てきます。批判の的にできる“象”を作り出すことで、そこに反発が集まってしまうのです。それが理由の1つ目です。

理由の2つ目は、名前をつけて単純化するのを避ける方が、つまり取り組みを一言にまとめない方が結果として、より詳細にストーリーとして説明する必要が出てきます。単語ではなく文章で伝えることになり、自分の希望や願いを言葉にして理由や目的の言語化が必要になります。興味深いことにビュートゾルフではヨス・デ・ブロック氏を含め、組織の誰一人として自社のモデルを単語で語りませんでした。組織の存在目的を文書にまとめてもいませんでした。人それぞれの言葉で何度も語り合うのが大切だからです。そうすれば聞き飽きることなく耳を傾けられる。名前をつけないことで、単語でなくストーリーで伝え続け、願いを言語化し変革に誘い続けられます。その効果は抜群です。始めはそれぞれの言葉を使っていたとしても、自然とひとつの言葉に落ち着くかもしれません。しかしできるだけ長く、それぞれの言葉を使いましょう。自分なりの解釈に頭を悩ます期間が長い方が効果が高く、ルドゥ氏も変革全体には名前をつけませんでした。もちろん関連プロジェクトには名前をつけもしました。実績評価の方法を見直すプロジェクトなどです。しかし取り組み全体には名前をつけなかった。その取り組みは根本的で重要なものだからです。重要なので単語1つにはまとめられないのです。

だから同じように、どんな変革に取り組んでいたとしても、変革の“1つの柱”などと呼ぶのも避けましょう。柱以外にもデジタル化など色々な変革が進行中のはずです。変革はあらゆる場所で起こるので、それぞれに名前をつけたくなるため、“変革の4つの柱”などよく聞くはずです。自主経営や全体性やティールも柱とされるでしょうが、柱と呼んだり一言にまとめたりしないで、言葉を省略せずに思いをそのまま活かして、単語よりも文やストーリーで伝えましょう。

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