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2.Perspectives on the journey
2-11 抵抗する人と協働する(How to work with people who resist)
よく話題になるテーマです。変革に抵抗する人にどう対処すべきでしょう?どこにでも変革を始めると抵抗をする人がいます。1つ目の方法は、変革を経験したリーダーの多くが勧めるものです。“抵抗する人にとり合わず支持者に集中せよ”
理由は3つあります。1つ目は適切な方向に力を使うためです。支持者に集中して進みたい方向を示しましょう。抵抗者はいくらか放っておくと、やがて抵抗をやめて支持者になる可能性もあります。2つ目の理由は消耗を減らすためです。抵抗者との対話は消耗し生産的になりづらいからです。3つ目の理由は、リーダーが支持者に専念することで、支持者が抵抗者に働きかけるようになります。そのうち支持者たちが抵抗者に指摘しだすのです。“後ろ向きなことばかりはたくさんです” “気に入らないのはいいけど邪魔しないでほしい”これは効果的です。リーダーは正しい方向に集中でき、抵抗者も仲間からの指摘の方がずっと効果があります。
しかし大きな注意点もあります。メンバーを枠にはめてはいけません。私も“支持者”や“抵抗者”と枠にはめています。ラベル貼りは危険です。支持や抵抗は一時的なものだからです。よく聞く話ですが、最も強力な抵抗者が最後には熱心な支持者に変わることがあります。抵抗は悲観から生じることもあります。もともと大きな願いや希望があったのにひどい目に遭い失望している。それで悲観的になり抵抗するのです。ラベル貼りによる他のリスクは、リーダーがラベルを信じ始め冷たく扱ったり無視しだす可能性があることです。
そして私の考えでは、変革の旅の高潔さは抵抗する人とどう向き合うかにかかっています。だからたとえば、支持者に専念しろという助言の意味は、全体には変革の旅を呼びかけ続けて、それに応じた人たちに力を注げという意味です。リーダーは抵抗者を尊重するべきだと考えています。悲観には正当な理由があるかもしれません。かつて何かに熱心だったのに組織に否定された経験があるのかもしれない。別の抵抗者たちはまた違った原因から、被害者のような気持ちでいるかもしれません。被害者意識は心地よいので、そこから抜け出すには深い自己変容が必要です。なので悲観も尊重する必要があります。
今から正反対のことも言いますね。抵抗者と向き合ってもいいでしょう。その場合のアドバイスは、ひとつ前の動画と似ています。表面的な問題への対処は避けましょう。そうした問題は切りがありません。私が心がけるのは好奇心を持って探ることです。深く掘り下げて探ってみるんです。何に抵抗しているのだろう?抵抗の奥に潜むニーズは何だろう?たとえば NVCというコミュニケーション手法には、“奥底のニーズは誰もが受け入れられる”という思想があります。そのニーズの伝え方が非生産的であっても、ニーズ自体は興味深いのです。
自主経営での典型例を挙げましょう。物事の進め方がわからず抵抗する人がいたとします。自分に何が求められ、何をしたらいいのかわからない。そこでのニーズは“明確さ”です。それがあれば仕事を理解し貢献して活躍できる大切なニーズです。つまり抵抗者はニーズの発見に役立つのです。今回の事例は、私の本でいう“順応型組織”における“明確さ”のニーズでしょう。何をどう進めて決定していけばいい?抵抗者は真のニーズを教えてくれるのです。支持者には見えないニーズをです。
こんな例も聞きました。その人が抵抗したのは、変革自体ではなく変革を支持する人たちの展開するストーリーが過去の美点を軽視していたことでした。その人のニーズは“先へ進む前に過去の美点を認めること”でした。そんなニーズを知るには、深く掘り下げてその人の真のニーズを理解すべきです。“話を聞いてほしい”というニーズもあります。仕事でのやりとりはすごく業務的で、多くの人は無意識のうちにダメージを負っています。人として扱われ認められたいのです。なので聴き合う会などを開くべきかもしれない。この変革への望みや恐れを聴き合えば抵抗も減るでしょう。
ポイントは使い分けです。基本的には多くのエネルギーを呼びかけに賛同した支持者に注ぎましょう。そして時に抵抗者と向き合い、表面的な問題でなく奥に潜むニーズを探るのです。それによって抵抗者が支持者へと態度を変えていくだけでなく、他にはない独自の変革を起こす機会になります。
その他にも、抵抗者たちが一線を越えて妨害してくる場合があります。その場合は介入が必要です。強制的かつ迅速にです。リーダーは矛盾に悩みます。“新しい組織で強制は禁物だ”という思い込みがあるからです。でも妨害されているなら強く出るべきです。
私が知っているフランスの組織では、印象的なエピソードを聞きました。CFOが仕事に抵抗し妨害していたので、CEOが介入して担当から外したんです。しばらく後になってそのCFOは、涙を流しながらCEOに感謝したそうです。そして介入に感謝を告げました。とても印象的なエピソードでした。介入するまではすごく慎重になります。あなたがリーダー、つまり“CEO”だった場合、自分が介入する前に周りの誰かが介入してないか確認します。誰もしていないなら、その理由は?誰も介入していない理由は単に仲間で話し合う機会がないからかもしれません。この変革をどう思う?良い所や悪い所は?話し合いを重ねると誰かが勇気を出して、抵抗者に言うでしょう。“後ろ向きな態度は良くないと思う”リーダーが介入するのではなく、自分たちについて語り合う場を作れば済むこともあります。変革について語り仲間内で正してもらうのです。
最後は少し別のタイプで、抵抗というより“無関心”です。記憶に残る話が1つあります。話をしたのはチリの素晴らしいリーダーで、農業関連の大きな組織を率いていました。彼が苦労したのは抵抗ではなく、多くの人の無関心だったと言います。そういう人たちは過去にほとんど教育を受けておらず、知識に乏しい状態で社会から見下されてきた階級のメンバーたちでした。そんな環境が長くて自信を欠いていたのです。それで変革の呼びかけに乗ることがなかった。あらゆる機会を避けていました。彼には好奇心を持って想像することを促しました。思うにそのメンバーたちは長く不当な扱いを受けてきたため、物事に無関心なのです。でもそれじゃ嫌だという声もあるはずです。そうした扱いに怒ってもいるでしょう。長きにわたる家族やコミュニティへの扱いに対する怒りに耳を傾けるのです。私と彼との会話はコーチングのようになりました。リーダーである彼に尋ねたんです。“もっと教えてください” “メンバーや無関心についてどう感じていますか?”かなり昔のことですが私の記憶が確かなら、リーダーは知ったのです。あのメンバーたちが汚名を着せられ、不当に扱われて無力感を抱く過程をです。そうした無力感を持つあまり無関心で身を守っている。そう語る彼の言葉はすごく力強かった。なので彼やあなたへはこう提案します。頭の中の言葉をみんなに伝えるのです。言葉をかけるのは効果的です。“変革をする理由の1つはこう感じたからです” “あなた方の受けた扱いは許しがたい” “私はみなさんをひとりの人間と見ていますし、他の人と同じ力を持っているはずです” “無関心を変えたいけれど、どうすればいいかわかりません” “ただ私の気持ちを伝えてあなた方の気持ちを聞きたいのです”結果は不明です。ですが効果的で素晴らしい対話があったことでしょう。
2.Perspectives on the journey
2.旅への展望
- 2-1 変革に対する新しい考え方(A new way to think about change)
- 2-2 4つの象限:好みと盲点(Four quadrants – preferences and blind spots)
- 2-3 どこから始めるべきか(前編)(Where to start – 1)
- 2-4 どこから始めるべきか(後編)(Where to start – 2)
- 2-5 試しても安全(Safe enough to try)
- 2-6 実験と標準化の緊張関係(Tension between experimentation and standardization)
- 2-7 ゼロから始める価値はある?(Is there value in reinventing the wheel?)
- 2-8 変革の旅に名前は必要か?(Should you give the journey a name?)
- 2-9 変わらないアイデンティティ(Our identity that will not change)
- 2-10 対立が表面化したとき(When pent up conflict breaks out)
- 2-11 抵抗する人と協働する(How to work with people who resist)
- 2-12 変革の現実と影(Reality and shadows of the transformation)
- 2-13 ユーモアと気軽さ(Humor and lightness)
- 2-14 コミュニケーションの新しい方法(Communicating in new ways)
- 2-15 コーチ・コンサルタント・ファシリテーターの役割(What roles for coaches, consultants, and facilitators?)
- 2-16 取締役会の役割は?(What roles for the board?)
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