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2.Perspectives on the journey
2-12 変革の現実と影(Reality and shadows of the transformation)
今回のテーマは少し哲学的なものです。しかし実践に役立つものです。ぜひ今からする助言をこの旅に向けて取り組む自己変革のひとつと考えてください。その変革とは、“メンタルモデル”にとらわれず“現実”を生きることです。人は現実を直視していないことが多く、メンタルモデルにとらわれて思い込みを生きています。つまりたとえて言えば、存在しているものから目を背けたり、存在しないものを見たりする。存在しないものを見るなんて冗談みたいです。例を2つ紹介します。
あるCEOと話しました。彼が求めていたのは戦略策定の方法でした。私は変革に移る理由を尋ねました。意思の不統一?環境の変化?戦略策定が必要な理由は?彼は答えられませんでした。戦略立案するのは当然だと思っていたんです。何らかの問題があれば戦略立案は必要ですが、そうじゃなかった。つまり実際には特に問題がないのに必要だと思っていたのです。
別の例もあります。私たちは多くの規則や手順を作っています。存在しない問題に対してです。具体的な問題があれば規則や手順は必要ですが、大抵は問題が生じてから考えれば済みます。なのに存在しない問題に早まって対処しているのです。原因は次のようなメンタルモデルです。“どんなリスクも見越して回避すべきだ”。そのせいで現実を直視せず、“リスクに今すぐ対処すべきか後でもできるのか”を検討しないのです。95%は起きた後でも対処できます。
逆のことも言えます。実際には存在するのに見ようとしない問題もあります。数ヶ月前、とても示唆に富む話を聞きました。“変革の影”について語り合う会でした。参加希望者はすごくたくさんいました。自主経営や全体性や存在目的への旅には変革にともなう落とし穴や影がつきものだからです。話を聞くうちに気づきました。“影”と呼ぶ理由は人は見たくないものを影に押し込んで、光を当てないようにするからです。現実がメンタルモデルに反するから目を背けるのです。参加者が語る例には共通点がありました。“ティール組織”であれ“自主経営”であれ、目的地へ向かう障害になる問題には目を背けたいのです。
書いてきた例を紹介しましょう。ある組織では、ある部門の業績が良くありませんでした。でも現実を直視せず放置していた。なぜならこの新しい組織では、具体的な数字や結果について指摘するよりも、人や感情を尊重すべきと考えて指摘を影に隠していたのです。ですがもちろん、結果は重要です。昔のように結果だけを重視しないようにはしますが、それでも重要なことではあるので現実を見て対処しましょう。
別の例では、活動の邪魔をしているメンバーがいました。でも周りは現実を見なかった。人当たり良くすべきというメンタルモデルだったからです。でもそれはただの思い込みです。実際にはあなたを傷つけ活動を妨害しているので、そんな現実に対処して自分を守りましょう。
別の思い込みを紹介します。ティール組織や自主経営組織においては、元トップに決定権はないという考えです。でも現実には前のトップだって多く貢献できます。否定するのはバカげています。元トップが意思決定への舵を取ってもいいのです。ぜひ現実を直視して、どうすればリーダーがつまり以前の経営層がヒエラルキーとは別の形で貢献し意思決定できるか考えましょう。“助言プロセス”が解決策かもしれません。別の例ではメンバーが競い合っていました。それを周りは見ないふりしていました。新しい組織では協調すべきと思っていたからです。自主経営には昇進の階段もないのにまだ競争している人もいる。それが現実なら受け入れましょう。メンバーが評価を求めているようだけどそれにどう対処する?4章の“自主経営”の動画においても、昇進や評価を求めるニーズへの対処法を紹介します。階層型ではない組織でどうするかです。問題があるならぜひ対処しましょう。目を背ける理由は、“ティールや自主経営でこうはしない”という思い込みです。
自分のメンタルモデルや思考から抜け出すのは、素晴らしくてかけがえのない行為です。人はメンタルモデルを通し世界をシンプルに見るものですが、できるだけ現実をそのまま直視しましょう。ホラクラシー組織などでは“テンション”という言葉で、問題や機会を中立的に表現しています。この言葉の面白いところは、テンションを感じ取るとは現実を感じ取ることです。感じ取るのは頭ではありません。不安などを通して頭ではなく体で感じます。希望であれ興奮であれ体からすぐに頭へ送られ、言葉や思考になるのです。メンタルモデルに生きるなとはつまり、どうしろと言っているかというと、テンションを感じ取り体の感覚を大切にすることです。体の反応を感じ取って、機能していない場所や改善点を探るのです。だから可能な限り現実を直視しましょう。テンションを感じ取りましょう。探求や対話の過程で何かに気づいたら、影に隠しそうになる気持ちを自覚して、問題の存在を否定せず向き合いましょう。
一方で、テンションが本物かも疑いましょう。思い込みから錯覚していないでしょうか。疑う必要がある理由は、メンタルモデルに生きて現実を影に押しやるのはエネルギーの浪費だからです。現実をありのままに受け入れれば、エネルギーも勢いも人間味も戻ってくる。組織の変革についての話ではありますが、この旅は素晴らしい個人的な変容の機会を提供してくれるのです。
2.Perspectives on the journey
2.旅への展望
- 2-1 変革に対する新しい考え方(A new way to think about change)
- 2-2 4つの象限:好みと盲点(Four quadrants – preferences and blind spots)
- 2-3 どこから始めるべきか(前編)(Where to start – 1)
- 2-4 どこから始めるべきか(後編)(Where to start – 2)
- 2-5 試しても安全(Safe enough to try)
- 2-6 実験と標準化の緊張関係(Tension between experimentation and standardization)
- 2-7 ゼロから始める価値はある?(Is there value in reinventing the wheel?)
- 2-8 変革の旅に名前は必要か?(Should you give the journey a name?)
- 2-9 変わらないアイデンティティ(Our identity that will not change)
- 2-10 対立が表面化したとき(When pent up conflict breaks out)
- 2-11 抵抗する人と協働する(How to work with people who resist)
- 2-12 変革の現実と影(Reality and shadows of the transformation)
- 2-13 ユーモアと気軽さ(Humor and lightness)
- 2-14 コミュニケーションの新しい方法(Communicating in new ways)
- 2-15 コーチ・コンサルタント・ファシリテーターの役割(What roles for coaches, consultants, and facilitators?)
- 2-16 取締役会の役割は?(What roles for the board?)
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