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4-4.Self-management: typical issues
4-4-8 自主経営組織の給与(Salaries in self-managing organizations)
自主経営に移行するすべての組織が直面するのが、給与はどうなっていくのか、という問題です。基本的に疑問は4つです。
“誰がいくらもらうのか?”
“誰が昇給するのか?”
“どれくらい透明性を保つのか?”
最後に“ボーナスとインセンティブをどうするのか?”です。
いくつかアイデアを紹介します。まず給与額について。自主経営に移行する組織の多くでは、初めて次の問いと向き合うことになるようです。
“どうすれば給与の差を正当に説明できるのか”
多くの組織で給与額は極秘扱いの事項で、中途社員は給与を交渉して入社します。
同じ仕事をしていても、人より多いこともあります。そのような格差は性別、人種、階級を超えて存在します。
この問題に多くの組織が取り組みだし、あらゆる組織が給与モデル作りを試みてきました。透明性のある給与システムのモデルです。ソーシャルメディア関連企業のバッファー社は、モデルの変遷を公開しています。包み隠さず記されており、同社が学んだ内容は興味深いものです。
一般にこれらの給与モデルは、等級システムと連動しています。キャリアバンドという等級制は4.4.7の動画で紹介しました。
また都会に住んで生活費が高い場合は、調整を加えることもあります。
採用が難しい特定のスキルにも、調整が必要です。プログラマーが必要な場合、その人が前職で高給取りだったらそれ以上の額を払う必要があります。周りと差が生じてもです。
このように、さまざまな変数をモデルに加えることができます。これも給与の決め方の1つです。
絶対に勧めない方法もあります。それは給与を役割と結びつけることです。
この人は5つの役割をこなしているから、給与に少し加算しようと考えてしまいがちです。それは良くない考えです。役割へのこだわりは軽くしたいからです。役割と金銭的価値を結びつけてはいけません。
“今 6つの役割をこなしてる。1つは時間がかかるから誰か代われる?”
と言えるべきです。役割は流動的にしたいのです。組織のニーズに合わせて人が集まるのが望ましい。
“この役割は安い、こっちは手放したくない”
といった考えは、恐れや駆け引きを招いてしまい、全体がスピードや有機性を失います。
もう一度言います。役割を金銭と結びつけて憧れの地位にしてしまうと、痛みが増してしまいます。
2つ目の疑問はこうです。
“無事に給与モデルを確立したとして、皆が その内容を理解したあと誰が昇給を果たすのか?”
詳細については私の著書で紹介しています。事例として挙げたモーニング・スターでは、年に1度助言プロセスを使い、給与を自己設定します。
reinventingorganizationswiki.comでは、給与に関する記事や事例を挙げて、給与の自己設定がどう機能するかや、格付けによる給与決定の方法を紹介しています。
格付けのシステムがなくても、自分たちで給与決定は可能です。助言プロセスを使って格付けが上がるかを決めれば、格付けの上昇に伴い給与も上がります。
3つ目の疑問は“どれくらい透明性を保つか”です。
隠す理由は何もないので、完全に透明化するのがいいでしょう。
複数の組織から聞いた話では、ある日すべての給与を公開したら、しばらくの間は衝撃が広がったそうです。
“彼のほうが彼女より上なんて変だ”
などと言い合っていました。でも、しばらくすると気にしなくなるようです。
たとえばキャリアバンドのような等級制があるならば、バンドがあることで多少の客観性を加えられます。等級の適正値よりも高い給料を受け取っている人は、その額に等級が追いつくまで昇給がないだけであり、それなら不利益にはなりません。
4つ目は“ボーナスとインセンティブをどうするか”です。
私が目にしてきたすべての自主経営組織において、個人的なボーナスをやめ、利益分配を行っているようです。
私には非常に納得できる話です。ボーナスとインセンティブは非常に強力な薬で、ひどい副作用が伴うため健康を害してしまいます。
機能を阻害するものなので、ボーナスとインセンティブは排除しましょう。
人は仕事で動機づけされるべきです。仕事は、やりがいや有意義な関係や自分の力を実感させてくれます。物事を動かして良い仕事をすることが動機になるのです。
そうはいっても組織が大きな利益を上げたときは、全員、利益から相応の分け前をもらうべきです。
従業員が所有する組織なら利益も所有することになり、全員に分配されることになります。私の知る限り、従業員が所有しない組織では、だいたい利益の3割を分配しているようです。
ほとんどの場合、各人の分配額は同じです。給与が低めの人にとっては、給与に対する分配額の割合は給与が上の人より高くなります。
多くの組織で利益分配は年に給与2~4か月分になり、自主経営組織の順調な経営ぶりが分かります。
もっと複雑なシステムもできます。
給与に対する割合の上限を設定したり、勤続年数にリンクしたり、方法はさまざまですが、シンプルに均等に分配するのが最も簡単な方法でしょう。
ニューヨーク州北部を拠点とするある企業では、少しひねりを加えた方法をとっています。その組織が導入したモデルは、年に1度ではなく月に1度利益を分配するものです。
月ごとにしている理由は、動機や組織との結びつきが強まるからです。組織が発展しているのを直に感じることができます。そのうえ毎月、経営の結果に直面することになります。それは多くの人の財務感覚を磨く結果につながります。
たとえば光学レンズメーカーのオプティマックスでは、作業現場でレンズを作っている人々も月々の財務の変化や仕組みを理解するようになりました。それは本人たちだけでなく、組織全体に役立ちます。
以上が4つの疑問ですが、もう1つ加えておきます。
“いつ考え始めればいいのか?”
私からのアドバイスは“急ぐよりは後からでいい”です。
いくつかの組織では、大きなシンボルとして早い段階で給与を透明化しました。でも私としては、先に他の部分で成功をおさめることを勧めます。
まずは自主経営をうまく機能させましょう。組織を成熟させていくのです。
お金に関することは、皆に負荷がかかります。組織が最大限に成熟したら、取りかかればいいでしょう。早い段階で取りかかると、厄介な問題を引き起こしかねません。
最後に興味深い話を紹介します。
私が目にしてきたどの企業も自主経営への移行にあたり、実力主義の枠組みを残しています。より上級の役割を担った場合、つまり以前より広い問題を考えるような役割に就いた場合、昇給することになります。
友人のミキ・カシュタンが勇気を与えてくれました。
彼女と共に強く信じていますが、我々の世界は実力主義の給与からニーズに基づく給与に変わるでしょう。
私が幹部の役割を担っていて、あなたは下の役割だとします。でも、あなたには老いた両親に子供と養子が数人います。あなたは私よりお金が必要です。そのニーズは役割や仕事とは無関係です。
私には腑に落ちる視点です。まだ主流からほど遠い考え方なので、組織がその方向に向かうのは大変でしょう。外の世界なら何倍も稼げる経験豊富な人を自主経営に誘うのは、大変だからです。
その方向に進む速度は遅いでしょうが、ニーズを中心に置く考えは興味深く重要だと考えています。
1つ可能に思える方法は、皆がデフォルトとして寄付することです。
組織内のニーズベースのファンドにです。給与の1%をファンドに入れて、やめることも選べるようにします。そのファンドの利用権を持つのは、特別な必要性がある人や何かが起きてお金が必要になった人です。
それはきっと素晴らしいシステムになって、人々に実力よりニーズが重要だと気づかせるでしょう。
4-4.Self-management: typical issues
4-4.自主経営の典型的な問題
- 4-4-1 自主経営への移行が難しいとき(When things are hard)
- 4-4-2 マイクロマネジメントを好むメンバーたち(Team members like to be micro-managed)
- 4-4-3 自由は享受し責任は負わない同僚(Colleagues take the freedom, but not the responsibility)
- 4-4-4 メンバーが互いに優しすぎるとき(Team members are too nice with one another)
- 4-4-5 メンバーが互いに厳しいとき(Team members are harsh with one another)
- 4-4-6 承認とメンタリングが欲しい!(We need recognition! And mentoring!)
- 4-4-7 キャリアアップはどうなる?(What happens to career progression?)
- 4-4-8 自主経営組織の給与(Salaries in self-managing organizations)
- 4-4-9 危機が生じたとき(In times of crisis)
- 4-4-10 CEOの継承(”CEO” succession)
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