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3.starting the journey

3-4 ただの人間に戻る(Return to being a mortal) 

CEOやリーダーに関してひとつ確実に言えることがあります。リーダーは日々の業務のほとんどにおいて、組織の大多数とは異なる役割を担っています。でも考えてみるとそれは変なことです。

将来、特権的な役割は非常識となるでしょう。会社の外の世界では許容されません。まるで昔のカースト制度のようです。王族や貴族にはそれぞれ決まった役割があり、商人や農民はまた別の役割を担う。それは西洋人からすればずいぶん過去の話です。その制度には批判的なのに、組織には同様の制度が今なお普通に存在し、慣習として多くの人が無批判に受け入れている。

この変革の旅はそこから脱する機会であり、組織のカースト制度を廃止していく機会です。それには大きな挑戦が必要になります。ただの人間へと戻る挑戦です。リーダーも周りと同じ身分になる。それは開放的でもあり難題でもあります。なぜなら自分の一部が、周りと違う立場や扱いに慣れているからです。

そこでエクササイズをお勧めします。今すぐにでも構いませんが、心の準備が整ったら紙を用意してリストに書き出してみるのです。メンバーたちとは違う自分専用のルールは何でしょう?大小はさまざまです。大きいものだと、リーダーは誰の承認も得ずに意思決定ができたりする。組織の大多数の意に沿わない決定だとしてもです。小さなものでいえば、リーダーだけ社用車があったり、専用の駐車スペースがあったり、自分だけ好きな時間に出社や退社ができたり、あるいは自分のオフィスだけ好きな内装にしたり、自分のオフィスだけ広かったり。ぜひ細かなリストを作ってください。CEOだけの特別なルールは何か?あるいは経営陣だけのルールは何でしょう?役に立つ問いです。

それが終わったら第2ステップは、リストを見ながら自分はどのルールを廃止したいか考えましょう。廃止とはつまり、リーダーが特権を手放し、たとえば自分専用の社用車を手放したり、逆にリーダーだけの特権を全員に開放するのです。たとえばリーダーが独断をやめ助言プロセスを導入したり、周りと同じルールで仕事に取り組むのです。そうやって1つずつリストを潰していきましょう。

そうやって進めていくと体験者の話からしてもあらゆる面で思わぬ効果が現れるでしょう。自分自身にも周りにも影響が現れます。自分自身には釘を刺す効果があります。“もう自分はただの人間なんだ”初めは慣れないでしょうが、そのうち開放的に感じられるでしょう。ただの人に戻ると、周りとの距離が前より縮まってより深く充実した関係が築けるようになります。

しかし歓迎する人ばかりではありません。愚かな行為だと戸惑う人もいるでしょう。効力が薄いと言う人もいます。そういう行為もありますが、組織内の権力格差の解体につながる行動もあります。リーダーの体験談を聞くと、こうした行動に関して確実に言えることがあります。

実に不思議なことに、リーダーの影響力が弱まるどころか強まるのです。なぜでしょう?昔のシステムでは、階層のトップは特別な役職で恐れられています。そのためフィルターがかかった情報が届きます。階層が多い大企業はなおさらです。組織の実情を知るのに苦労するのです。

ただの人間に戻り助言プロセスを使えば、大勢のうちの1人となり、組織の現状を知るために届く情報の質が飛躍的に向上するでしょう。あるいは周りが正直に話しかけ、疑問をぶつけてくれるので、リーダーの思考や決定の質が向上していきます。ただの人になることで周りにイエスマンが減っていきます。リーダーの影響力も増し、周りも力を発揮できて、失うもののない誰もが得する関係です。失くすべき唯一のものは特別扱いを求めるエゴです。なので効力が薄いとは思いません。とても大きな意義があります。ぜひ検討してみてください。ただの人間に戻ることをお勧めします。

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