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6.Evolutionary purpose
6-4 現実を直視する勇気はあるか?(Do you have the courage to face reality?)
存在目的を論じる際、避けて通れない問題があります。それは、現代のビジネスがいかに破壊的かということです。今の経済のあり方はあまりに有害です。
組織にとっては大変な状況と言えます。組織の存在目的と向き合い、耳を傾けるのは大変な作業でショッキングな結論に至る可能性があります。存在目的に照らせば、今あるビジネスのおそらく大多数が存在すべきでない有害なものだからです。
そんな組織にいる人に私は深く同情します。そこでは上辺だけのステートメント作りに必死です。存在目的に耳を傾けるのは本当に難しいからです。
無害でいられる存在目的なんて、いったいどんなものだろう?今やっているビジネスはどうなる?
今こそ向き合う時だと思います。
私はある会社のCEOに感動しました。
彼の会社は世界にチェーン展開するような大型ショッピングモールです。CEOは勇気を出して事業実態を精査し、自分たちが過剰消費を支えている現実を直視しました。ショッピングモールは消費の殿堂です。持続不可能ゆえに人類を幸せにしません。
私はCEOの勇気に胸を打たれました。正面から問題に向き合ったのです。言い訳などしません。そのビジネスの有害性を認め、どんな存在目的を持つべきか探求したのです。そして打開策を模索しました。
たとえばショッピングモールは巨大な空間で、造りが大きいので何千もの人が集まれる。だから将来は町の広場として役立てられるかもしれない。
とても珍しい向き合い方で感銘を受けました。
世の中の産業はとても破壊的なものばかりです。
食肉産業が存続できるのは実態が見えないからです。工業型畜産における飼育の実態を目にしたら、動物のひどい扱われ方を知り、ショックで肉を食べられないでしょう。
実態が見えないから存続しているのです。
現在の肥料や殺虫剤産業が続けている農業システムは、消費者を裏切る破壊的なやり方です。いずれ表土をダメにするでしょう。
ファッション業界だってそうです。イメージを売ることだけで成り立っています。画像を加工してセクシーで完璧な女性に見せたり、少女に大胆なポーズをとらせたりして、目も当てられません。そうした広告の実に多くが、ほとんど区別がつかないんです。ファッションと性的搾取の見分けがつかない。本当にあ然とします。
コカ・コーラのような飲料は本当にこの世に必要でしょうか?
学校に目を向ければ、システムの欠陥が子供の成長を阻んでいます。
これらの業界で存在目的に向き合うのはつらいはずです。明るい答えが出るはずありません。もし心から耳を傾けたら、今のままで いいはずがないのです。
きっと、これらのビジネスの大半は死んで、次世代の養分として身を捧げる運命なのです。
そこで簡単なテストを考えました。事業の存在価値を見極めるテストです。問いは全部で3つ。
最初の問いはこうです。“マーケティングが行えない場合、その事業はどうなる?”
宣伝なしでも生き残れるでしょうか?
あるいはそのビジネスはニーズを捏造し続けないと成立しないものでしょうか?
もし、コカ・コーラの広告がこの世から消えたらどうなるでしょうか?
その事業が存在するのは魅力的だから?
それとも常にイメージを捏造して“幸せのために必要”と刷り込んでいるから?
2つ目の問いは透明性についてです。
何か商品やサービスを買う前に完成までの全工程を記録した5分間のビデオを見るとします。それを見ても買いますか?肉を買う人はもはやいなくなるでしょう。その映像を見たら、もう乳製品に手が伸びないと思います。
知らない人のために補足すると、現在、牛は人工授精が一般的です。獣医が牛の体内に手を突っ込み、要は牛をレイプして精子を注入するのです。母牛は毎年、出産させられ、すぐに子牛と引き離されます。母牛は数時間から2日間も泣き続けて、子を奪われた悲しみに暮れます。
すべては人間が牛乳を手に入れるためです。泣き叫ぶ牛の映像を5分間見ても、牛乳やチーズやアイスを買えますか?チーズ好きの私にはつらい話ですが、現実を見ましょう。
3つ目は“フルコスト”です。
商品やサービス自体の価格以外のあらゆるコストが表示されていたとします。商品が引き起こす公害などです。それでも買いますか?
学校を例に考えてみましょう。工場運営のような機械的な学校システムの中で生徒が抱える不安を、すべて勘案するのです。絶望感、自殺、退学率、青少年犯罪など、学校から生まれる不安を考え合わせても現在の形で学校運営を続けますか?
非常に面白い思考実験です。自身の事業に応用してください。
マーケティングができず、透明性を確保して、製造工程を公開する義務があり、フルコストを示す必要がある場合、あなたのビジネスは存続できるでしょうか?
ぜひ真剣に考えてみてください。勇気を持って、現実と向き合いましょう。苦しいかもしれません。私たちは答えのある問題を解くことに慣れ切っているからです。
問題と最後まで向き合うのは大変なことです。答えが出るまでには時間もかかります。
でも時には、ふたを開けて中をのぞいてください。そうしないと現状を変えられません。
命を持たず 存在目的に反するものが生きながらえます。企業は不自然な目標にむりやり命を吹き込もうと莫大なコストをかけており、人間や地球に負荷がかかっています。
答えは簡単には出ません。生きる価値のないものをどうやって死なせるか、私にも分かりません。
でも向き合わないと答えは出ないのです。
勇気を持って向き合えばきっと、アイデアや可能性が生まれます。だからこそ組織が何を求めているか、耳を傾けて聞いてみましょう。生き生きした高邁な存在目的を見つけてください。
6.Evolutionary purpose
6. 進化の目的
- 6-1 存在目的の真の意味(What evolutionary purpose really means)
- 6-2 最大化と自己防衛を超えて(Beyond maximization and self-preservation)
- 6-3 北極星としての存在目的(Purpose as the guiding star)
- 6-4 現実を直視する勇気はあるか?(Do you have the courage to face reality?)
- 6-5 存在目的を探求する方法(How to determine purpose)
- 6-6 見せかけのパーパス(Fake purpose)
- 6-7 戦略的計画は必要か?(Do we need strategic planning?)
- 6-8 戦略的計画の立て方(How to do strategic planning)
- 6-9 プランニングをやめるべきか(Should we stop planning?)
- 6-10 予算なしでできる?(Can we do without budgets?)
- 6-11 指標や目標は必要?(Do we need indicators and targets?)
- 6-12 ビジョンという言葉を好まない理由(Why I don’t like the word “vision”)
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