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「良かれ」と思ってしたことは、私を嫌な経営者にしていた ― 井尾佐和子さんがソース原理から学んだ、“引き受ける”ということ ―

「社員のため」「チームのため」と思ってやってきたことが、いつの間にか自分を苦しめていた。
デザインコンサルタントとして企業や地域のブランドづくりに携わり、現在は「コミュニティカンパニー」を率いる井尾佐和子さんは、自らの経験をそう語ります。

※本記事は、ソース原理 実践ワークショップ(以下、ソースワーク)を受講した井尾さんのインタビューです。

経営者としての「違和感」からはじまった探求

キャリアの初期から、井尾さんが関心を持っていたのは「なぜその事業をやるのか」という源の部分。
経営者の理念を事業デザインに落とし込む仕事にやりがいを感じていました。

けれど、自らが経営者になり、従業員を抱えるようになると状況は一変します。
「社長らしくあらねば」と自分を抑え、社員のために制度を整えるうちに、かえって息苦しさが増していきました。
気づけば、自分がかつて残念に思っていた“社員想いすぎる経営者”そのものになっていたのです。

「良かれと思って整えた仕組みが、仲間からは“つまらない”と言われた。
ああ、自分は『社長を演じていた』んだと気づきました。」

出産を機に、自分の内側にある“純度”が上がる感覚もありました。
本心から動いていないプロジェクトや、ソースが不在の案件には関われなくなっていったといいます。

ソース原理との出会い
― 「もっと早く知っていれば、こんなに葛藤しなかった」

そんなとき出会ったのが、ソース原理(The Source Principle)。
すべてのプロジェクトには“ソース(最初の一歩を踏み出した人)”となる人がいて、その人がビジョンを引き受けることで流れが生まれるという考え方です。

「『あなたはソース原理そのものだね』と言われて初めて話を聞きました。
もっと早く知っていれば、こんなに葛藤しなかったのにと思いました。」

井尾さんが特に印象に残ったのは、「クリエイティブヒエラルキー」という概念。
ソースが意思を明確に示すことはチームに課題や制限を与えることではなく、むしろチームを自由にするという考え方です。

「私は“ソースの怠け者病”でした。みんなの主体性を尊重しようと、自分の本音を言わなかった。
でも本当は、私がはっきり方向を示すことを、みんなは望んでいたんです。」

※ソース原理とは
ソース原理(Source Principle)とは、ピーター・カーニックによって体系化された「創造のプロセスに関する原理」。すべてのプロジェクトや組織には“ ソース ”と呼ばれる「アイデアを実現するために最初のリスクを取った人」が存在し、その人の意思や感覚が創造の流れを生み出すとされます。ソースが明確で自分の役割を果たすことで、そのプロジェクトや組織に関わるあらゆる人も、ソースと同様に創造性に仕事や活動に取り組めるようになります。

2025年10月開催、ソースワークin京都の様子

ソースワークを受講した気づき
― 「自分のための対話」を取り戻す

今回のソースワークで印象的だったのが、「ソースの案内人」という役割。
これまで井尾さんは、社員の気づきを促すために“聞く側”に回ってきました。
しかし、そこで初めて「自分のために対話を使う」という視点を得たといいます。

「社長はみんなの話を聞くものだと思っていました。
でも、自分の意思を整理するために話を聞いてもらうことも大事なんですよね。」

また、プロジェクト内で“どの立場から話しているのか”が曖昧になり、チームが混乱していたことにも気づきました。
組織やプロジェクトの「入れ子構造」を意識することで、ソースとして発言するのか、一人のクリエイターとしてなのかを明確にし、無駄な遠慮が減ったといいます。

※案内人とは
ソースはビジョンに関する多くのアイデアを受け取り、明確にし、その実現に向けた次のステップを明確にしていきます。そして、それを周りに伝えていきます。この役割のことを「案内人(guide)」と呼び、ソースの重要な役割の1つです。

「ソースを引き受ける」リーダーを支えるために
― コミュニティカンパニーとしてのこれから

現在、井尾さんは「コミュニティカンパニー」という形で、インテグラル理論やティール組織、ソース原理などの考え方をベースにした“生命的な組織”をつくる挑戦をしています。まずは、自分たち自身が体現することで、そのパワフルさを示したいと考えています。

「一人ひとりが自分の理念(will)を持つことが、ソース原理的な組織づくりにつながると思っています。
“こぢんまりしてる場合じゃない”という気持ちが強いんです。」

同時に、経営者が「ソースを演じる」のではなく「引き受ける」ためのサポートも構想中。
ソースワーク実践者との連携による具体的な支援プログラムも検討しています。

「かつての私のように、傷つきたくなくて“社長を演じる”人を支えたい。
ソース原理を体現する組織を、自分たち自身でつくりたいんです。」

井尾佐和子さん プロフィール

YoubeYou株式会社 代表取締役
クリエイティブプロデューサー
アーティスト・アクティビスト・サイキックメンター

経営課題を最新のデザイン思考で解決する事例を学び法人化。
ブランディング・ソーシャルデザイン事業を展開する中、2014年から「自分の生き方を自らクリエイトしよう!ワタシクリエイト」をコンセプトにしたイベントを企画し開催をスタート。

2018年、カフェラウンジ型100平米の Cocreation space Atlya 参宮橋をオープン、YoubeYou株式会社を創業。自分の幸せから始める半径3mから広げるソーシャルデザイン、生きると働くを分けない包括的なキャリアデザインを提唱している。

一人一人の変容をサポートする現在8期目である「ワタシクリエイトジャーニー」を開校。
オンライン上でも「私を生きる」セルフコンディショニングを整えられるプラットフォームとして「ワタシクリエイトROOM」を開設し、オンライン・オフラインでコミュニティ醸成を行う。

2025年〜 真言密教「寳幢寺」在家修行者として「萃純」という名で活動。
新しい働き方を実験し、日本の魅力を再発見しながら多拠点を横断するアクティビストでもある。

おわりに

このインタビューを通して、ソースワーク(ソース原理 実践ワークショップ)の世界に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
より詳しく知りたい方は、以下のリンクもぜひご覧ください。

◆ ソースワーク(ソース原理 実践ワークショップ) [詳細はこちら] 
 東京開催(2025年12月から、連続型で開催)
 京都開催(2026年春頃に開催予定)

◆「Source Work」特別解説動画/ステファン・メルケルバッハ氏 [視聴する]

◆「Source Work」特別解説動画/嘉村賢州 [視聴する]

執筆:ティール組織ラボ編集部
話し手:井尾佐和子さん
聴き手:丸毛幸太郎(ティール組織ラボ 事務局)

Writerこの記事を書いた人

ラボ編集部

teal-lab-team

『ティール組織』(英治出版)解説者・嘉村賢州を中心に結成されたチーム。ティール組織をはじめとする進化型組織の最新動向やさまざまな知見を紹介していきます!ニューパラダイムの示す未来を探求し、実践する方のサポートになれば幸いです。

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